俳句

季語|相撲(すもう)

初秋の季語 相撲

相撲取(すもうとり)角力(すもう)草相撲(くさずもう)九月場所(くがつばしょ)秋場所(あきばしょ)

相撲日本の国技ともされる相撲は、「古事記」(712年)にも登場する。その起源は、葦原中国平定の時の建御雷神(鹿島神宮の御祭神)と建御名方神(諏訪大社の御祭神)の力競べだったとされる。「すもう」の言葉は、日本書紀の垂仁天皇七年条に現れる。そこでは、当麻蹴速の力自慢の噂を聞いた天皇が野見宿禰を召し出して、七月七日に「捔力らしむ(すまひとらしむ)」とある。ただし、この時は向かい合って蹴り合ったとあり、現在の相撲のようなものではなかったと見られている。当麻蹴速と野見宿禰が競い合ったとされる奈良県桜井市には、相撲神社が建立されている。この時に勝利した野見宿禰は出雲の人で、出雲大社境内に野見宿禰神社がある。

江戸時代に入ると神事にからめて勧進相撲が興行され、庶民の娯楽として定着するようになった。寛政年間には、谷風や雷電といった力士が現れ大人気となり、1833年からは両国を定場所とするようになった。1925年には日本相撲協会が誕生し、1958年からは15日興行を年6場所行う大相撲が定着した。
もとは豊穣を占う神事だったことから、「相撲」は秋の季語とされるが、日本相撲協会が主催する大相撲の「初場所」「春場所」「夏場所」「秋場所」といった、季節に応じた季語もある。

【相撲の俳句】

みやこにも住みまじりけり相撲取り  向井去来
宿の子をかりのひいきや草相撲  久保より江

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季語|阿波踊(あわおどり)

初秋の季語 阿波踊

阿波踊阿波国(徳島県)発祥の盆踊りで、日本三大盆踊りの一つ。現在では全国的な広がりを見せ、高円寺阿波おどりは本場に迫る規模を持つ。会場によって開催日は異なるが、本場徳島市の阿波踊は、8月12日から8月15日の間に開催され、「連(れん)」と呼ぶ踊りの集団が全国から集結し、桟敷席に囲まれた会場や通りを練り歩く。また、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」と歌われるように、飛び入り参加できる「にわか連」があったりなど、誰でも参加できるのが特徴である。
念仏踊りに起源をもつという考えがあるが、地元では、徳島藩藩祖の蜂須賀家政が無礼講として許可したことが起源だとされている。

▶ 関連季語 踊(秋)

【阿波踊の俳句】

手をあげて足をはこべば阿波踊  岸風三樓

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季語|蝗(いなご・いなむし・こう)

初秋の季語 

螽(いなご)・稲子(いなご)・蝗取り(いなごとり)

蝗直翅目イナゴ科イナゴ属の昆虫の総称で、日本にはハネナガイナゴ・コバネイナゴなどが生息する。
葉や茎を食す稲の害虫としてよく知られ、「蝗害(こうがい)」という言葉もある。ただし、大発生して稲を壊滅させることを意味する「蝗害」を引き起こすのは、トノサマバッタなどの相変異(密集すると、通常とは異なった外観や性質を持つ個体が生じること)を起すバッタで、大移動することから「飛蝗(ひこう)」とも呼ぶ。イナゴはこれに該当しない。元々「蝗」は、中国で相変異を起こして群生相となったワタリバッタを指すものであった。
俳諧歳時記栞草(1851年)には秋之部七月に「蝗(いなむし)」があり、「螽(いなご)に類す」とある。金の声を恐れるとして、鐘を叩くなどして「虫送(むしおくり)」する行事があった。
タンパク質・カルシウムの補給源としても古くから利用されており、イナゴの佃煮などがある。

【蝗の俳句】

螽飛ぶ草に蟷螂じつとして  河東碧梧桐

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季語|草雲雀(くさひばり)

初秋の季語 草雲雀

朝鈴(あさすず)

草雲雀直翅目バッタ目コオロギ科の昆虫。本州以南に生息し、雄は8月から10月頃に昼夜問わず鳴く。特に明け方によく鳴くので、「朝鈴」の別名がある。
草の中に生息する雲雀のような美しい鳴き声を持った虫という意味で、「草雲雀」の名がついた。

【草雲雀の俳句】

朝雲は湖へながれぬ草ひばり  星野麥丘人

【草雲雀の鳴き声】
生け垣や低木、草むらに潜み、その鳴き声は「フィリリリリ…」あるいは「キリリリリ…」と聞きなす。(YouTube 動画)

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季語|葛の花(くずのはな)

初秋の季語 葛の花

葛の花マメ科クズ属クズは、北海道から九州までの荒れ地などに自生する蔓性の多年草で、8月中旬から9月頃に花をつける。秋の七草のひとつである。
花は紫色で芳香を持つが、白花のシロバナクズや、桃色のトキイロクズもある。花を乾燥させると、葛花(かっか)という生薬になる。イソフラボンを含み、二日酔いに効くとされる。
葛は、古くから食用や薬用に用いられた有用植物であるが、繁殖力が強く、世界の侵略的外来種ワースト100に指定されており、海外では駆除の対象となっている。

大和国吉野の国栖(くず)が葛粉の産地だったことから「くず」と呼ばれるようになったとされる。日本書紀(神武紀)には、即位前の神武天皇の軍隊が、大和葛城で葛(かづら)の網を用いて、敵である土蜘蛛を倒した話が記録されている。ただし、この「葛(かづら)」とは、蔓草の総称だと考えられている。
万葉集には葛を歌ったものが二十一首あるが、葛の花を歌ったものは秋の七草の起源となった山上憶良の和歌のみである。
俳諧歳時記栞草(1851年)では、「葛の花」は夏之部六月に分類されている。

【葛の花の俳句】

人の身にかつと日当る葛の花  飯島晴子

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|秋海棠(しゅうかいどう)

初秋の季語 秋海棠

断腸花(だんちょうか)・瓔珞草(ようらくそう)

秋海棠 シュウカイドウ科シュウカイドウ属シュウカイドウはベゴニアの一種で、8月から10月頃に花をつける。
雌雄異花同株で、雄花は上方に正面に向いて咲く。中央の黄色い雄蘂の左右に花弁を持ち、それより大きい上下の花弁のようなものは萼である。雌花は下方に下向きに咲き、花弁は1枚だけのものが多い。
江戸時代初期に園芸用に持ち込まれ、「大和本草」(貝原益軒1709年)に、「寛永年中、中華より初めて長崎に来る。それ以前は本邦になし。花の色海棠に似たり。故に名付く」とある。「しゅうかいどう」は、中国名「秋海棠」の音読みである。現在では半野生化している。

「断腸花」の語源説には、中国の昔話がある。好いた男との逢瀬が叶わなくなった美女が、断腸の思いに暮れて涙を流した。そこから生えてきた草を断腸花と呼ぶようになったという。
仏像の装飾具の瓔珞に似ていることから「瓔珞草」の別名もある。

【秋海棠の俳句】

秋海棠西瓜の色に咲きにけり  松尾芭蕉
病める手の爪美しや秋海棠  杉田久女

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|男郎花(おとこえし)

初秋の季語 男郎花

男郎花オミナエシ科オミナエシ属オトコエシは、女郎花に似ているが、花が白くて大きい。古い時代に中国から入ってきたと考えられ、北海道から奄美大島まで分布している。8月から10月頃に花をつける。
元は「おとこへし」と呼ばれ、「へし」には「圧す」が充てられていたと考えられる。また、「おとこめし」とも呼ばれ、白米を男が食べ、黄色い粟飯を女が食べたことから、それぞれの花色に合わせて「おとこめし」「おみなめし」と呼ばれ、そこから「おとこえし」「おみなえし」に転訛したとの説もある。
「敗醤(はいじょう)」とも呼ばれるが、これは、花が萎れると腐った醤油のような臭いを発するところからきている。女郎花も「敗醤」と呼ばれるが、本来は男郎花を指す。

【男郎花の俳句】

相逢うて相別るゝも男郎花  高浜虚子

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季語|藤袴(ふじばかま)

初秋の季語 藤袴

藤袴キク科ヒヨドリバナ属フジバカマは、中国原産の多年草で、関東以西の本州・四国・九州の草地などに自生している。8月から10月頃に花をつける。
現在では激減し、環境省レッドリストに載る。藤袴の名で市販されているもののほとんどは、サワフジバカマという品種である。

万葉集に載る山上憶良の和歌から、秋の七草の一つとなっている。花弁が袴のように見える藤色の花を咲かせることから、「藤袴」の名になったとされる。
また、「古今栄雅抄」(飛鳥井雅俊:室町時代後期)に載る話が名前の由来になっているという説もある。それによると、秋雨の中に藤色の袴をはいた少女がいて、泣いていた。誰も声をかけることができず、心配になって翌朝見に行くと、娘がいたところに藤色の花が咲いていた。以来それを「藤袴」と呼ぶようになったという。

伐りとって乾燥させると芳香がするため、中国では古くから芳香剤として利用された。そのため、良い香りの植物を表す「蘭」の字を用いたが、後にそれはシュンラン属に譲り、「蘭草」「香草」「香水蘭」などと書かれるようになった。日本でも允恭紀(日本書紀)では、「蘭」と表記されている。

【藤袴の俳句】

枯れ果てしものの中なる藤袴  高浜虚子

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季語|稲の花(いねのはな)

初秋の季語 稲の花

稲の花イネ科イネ属イネは、「」で三秋の季語になるが、「稲の花」だと初秋の季語。品種によってバラツキはあるが、8月頃に穂が出て花を咲かせる。花は頴花(えいか)と呼び、ひとつの穂に100個ほどついている。頴花の開花時間は午前中の10時頃から12時頃と短く、穂先から順に開花していき、ひとつの穂の開花期間は1週間ほどである。
風媒花ではあるが、栽培種ではほとんどが自家受粉する。受粉を確実にするため、開花期間に田圃に入ってはならない。

【稲の花の俳句】

おだやかに戻る暑さや稲の花  木下夕爾

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|茗荷の花(みょうがのはな)

初秋の季語 茗荷の花

秋茗荷(あきみょうが)

茗荷の花ショウガ科ショウガ属ミョウガは、花および若芽が食用となり、一般的には花穂を単に「茗荷」と呼ぶ。この「茗荷」は、蕾の塊のようなものである。因みに花穂が開花する前のものは「茗荷の子」と呼んで夏の季語になる。
茗荷の花の季節は7月から10月で、植え付ける時期によって、夏茗荷と呼ばれるものと秋茗荷と呼ばれるものに分かれる。秋茗荷の方が赤っぽくなり、一般的には美味いと言われる。

東アジア原産で、日本へはかなり古い時代に中国から渡来したと考えられている。魏志倭人伝に蘘荷(じょうか)として出ており、日本では古くから栽培も行われていたと考えられているが、現在のところ食用で栽培されているのは日本だけである。
釈迦の弟子に、自分の名前すら忘れてしまう者がおり、釈迦は名を書いた旗を荷わせたという。その者の死後、墓から生えてきた草に「名荷」と名付けたという。根拠はないが、「食べると物忘れがひどくなる」と言われている。
武士は「冥加」に掛けて、茗荷紋を使用したという。

【茗荷の花の俳句】

つぎつぎと茗荷の花の出て白き  高野素十

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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