三秋の季語 鹿
ウシ目シカ科シカ属ニホンジカ。日本には、エゾシカ・ホンシュウジカ・キュウシュウジカ・マゲシカ・ヤクシカ・ケラマジカ・ツシマジカの7つの亜種がある。雌雄別々に群れを形成し、9月から11月に交尾を行う。この繁殖期に発する雄の声が哀愁を帯びており、古くから和歌に歌われることが多く、秋の季語となった。
古くは、皮を意味する「か」と呼ばれていた。それに肉を表す「し」がついて、「しか」と呼ばれるようになったと言われている。また、雄を指す「兄(せ)」に「鹿(か)」がくっついて「せか」と呼ばれていたものが、転訛して「しか」になったとの説もある。
古事記の天岩戸の項には、「天の香山の真男鹿(さをしか)の肩を内抜きに抜きて、天の香山の天の波々迦を取りて、占合まかなはしめて」とあり、鹿の骨を使った太占(ふとまに)の記述がある。
万葉集には妻恋の声を歌った舒明天皇の
夕されば小倉の山に鳴く鹿の 今宵は鳴かず寝ねにけらしも
などがある。また、「紅葉に鹿」と言われるように、紅葉とともに歌われたものも多く、古今和歌集にのる
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋はかなしき
などがよく知られている。
春日大社では、武甕槌命が神鹿に乗って鹿島神社からやってきたと伝わるため、神の使いとして大切にされている。宮島の鹿は、不浄を嫌って狩猟が禁止されたために増えたと言われている。
【鹿の俳句】
【鹿の鳴き声】繁殖期の雄鹿の鳴き声と、雌鹿の警戒音。(YouTube 動画)