三冬の季語 鳰
におどり
カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ属カイツブリは、小型の水鳥。本州中部以南では留鳥、本州北部や北海道では夏鳥である。池や沼などによく見られ、潜水して魚や昆虫などを捕食する。
芭蕉の時代には季節を定めない「雑」の扱いであったが、冬の季語となる「水鳥」に倣って、鳰も冬の季語となる。冬の季語になった理由として、鳴き声が寒げだというものがある。
語源には諸説あるが、水を掻いて潜る時「ツブリ」と水音をたてるとして「かきつぶり」になり、「かいつぶり」に転訛したとの説がある。
古くから親しまれてきた鳥であり、むかし琵琶湖は「鳰の海(におのうみ)」と呼ばれていた。古事記の神功皇后条にある忍熊の王の反乱の話には、琵琶湖における鳰の歌がある。忍熊の王の最後は琵琶湖に入水して果てるのだが、その時に
いざ吾君 振熊が痛手負はずは 鳰鳥の淡海の海に 潜きせなわ
と歌う。鳰鳥は、淡海の海(琵琶湖)の枕詞となる。
万葉集にも鳰鳥(におどり)は8首歌われ、坂上郎女は
鳰鳥の潜く池水こころあらば 君に吾が恋ふる心示さね
と歌っている。「鳰鳥の」は「潜く(かづく)」の枕詞になっている。その他「葛飾(かづしか・かつしか)」「息長(おきなが)」にも掛かる。