三冬の季語 鯨突
鯨突とは、鯨を銛で突いて捕えることである。江戸時代には「鯨組」が組織されて、全国で年間数百頭もの鯨が捕獲されていた。
日本における捕鯨の歴史は古く、すでに縄文時代には鯨食文化があったと考えられている。ただし、積極的な捕鯨があったかどうかは見解が分かれており、座礁鯨を食用にしたとの説もある。
万葉集には「鯨魚取り(いさなとり)」の和歌があることから、奈良時代には積極的な捕鯨が行われていたと考えられている。古くは簎や鉾などを用いて捕鯨していたと考えられるが、鎌倉時代には手銛によるセミクジラやコククジラの捕鯨が始まり、江戸時代のはじめに和歌山の太地で網をかけて銛で突く漁法が開発されたことにより、ナガスクジラの捕鯨も可能になった。明治時代には、捕鯨砲を用いるノルウェー式捕鯨が導入されて、それまでの漁法は一掃された。
世界的には、主に鯨油を得るために鯨の乱獲が行われ、20世紀には鯨類資源は枯渇した。そのため1948年に国際捕鯨委員会(IWC)が設立され、1982年には商業捕鯨モラトリアムが採択され、商業捕鯨は一時停止されることとなった。1951年にIWCに加盟した日本は、1985年に商業捕鯨の一時停止決議を受け入れて調査捕鯨のみを行っていたが、2019年に脱退した。
日本で捕獲された鯨は、食用にされるとともに、鯨骨や鯨ひげは様々な道具に加工し、鯨油は除虫材や灯火用などに利用された。
多くのクジラには回遊する習性があり、江戸時代には、地方によって捕獲シーズンは異なっていた。俳諧歳時記栞草(1851年)では「鯨突」が冬之部に分類されているが、捕鯨が盛んだった紀州熊野浦では、仲冬がシーズンだった。
日本の開国につながった黒船来航は、日本の港を捕鯨のための供給基地にする目的があったとされている。
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