梅が香にのつと日の出る山路哉

うめがかに のっとひのでる やまじかな

松尾芭蕉の名句|かるみの境地に立つ

梅が香にのっと日の出る山路かな(栗原信充画芭蕉像)松尾芭蕉最晩年となる、1694年(元禄7年)春の句。「俳諧炭俵集」(1694年)冒頭を飾る、志太野坡との歌仙の発句。脇は野坡の「処々に雉子の啼たつ」。
「のっと」という言葉を用いて、芭蕉特有の世界を築いた名句である。森川許六がいう「炭俵のかるみ」が端的に表れた句であり、蕉風のひとつの型を成した。

意味は「山路を歩いていたら、梅の香が漂う中に、突然に太陽が顔を出したよ」というような感じで、季節は「梅が香」で春ではあるが、「探梅」に近い冬の寒さが背景にはある。日が出たことで一気に視界が開け、梅の花を目の当りにする。冬から春への季節の移り変わりが、鮮やかに詠みこまれている。

▶ 松尾芭蕉の句