こぞことし つらぬくぼうの ごときもの
川端康成に「恐ろしい」と表現された虚子の新境地
昭和25年(1950年)12月20日に、ラジオの新年放送の俳句会を録音した時の、高浜虚子の俳句。同じ鎌倉に住んでいた川端康成が鎌倉駅でこの俳句に出会い、その感動を随筆にしたことから有名になったとされる。後に康成は、「虚子の句で、この一句ほど恐ろしい句はない」とも言っている。
虚子自身にとってもこの俳句は特別な意味を持ったと見られ、「虚子百句自選」の最終句にしている。
意味は、「時は刻々と変化し、年も変わり目となったが、そこには切り離せない、まっすぐな棒のようなものが横たわっている」といったものであろうか。それは、築き上げてきたものに対する自信と見ることもできるし、閂のように嵌った動かし難い積年の弊害と見ることもできよう。
直喩を用い漠然としたものを表現したこの俳句は、花鳥諷詠に根差した虚子自らの世界に、新風を呼び込んでいる。
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