初夏の季語 芍薬
別名に「白犬」「花の宰相」「花相」「将離」「えびす草」「えびす薬」「かほよ草」など。
ボタン科の多年草で、牡丹に似た花を咲かせ、牡丹が「花王」と呼ばれるのに対し、芍薬は「花の宰相」「花相」と呼ばれる。牡丹が樹木であるのに対して、芍薬は草本で、牡丹が咲き終わる5月から6月頃に花をつける。
中国原産で、平安時代に薬用として渡来してきたと考えられている。江戸時代には多くの園芸品種が開発された。
「芍薬」は漢名で、「美しい薬草」のような意味を持つ。根を乾燥した生薬「芍薬」は、鎮痛や止血などの効果がある。また、姿がしなやかで美しいことを指す「婥約(しゃくやく)」から名前がついたとも言われる。美女の形容として、「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」という都々逸もある。
小野小町の伝説「百夜通い」の一説に、芍薬が出てくるものがある。思いを寄せる深草少将へ「百夜通い続けたなら契りを結ぶ」と告げると、深草少将は毎日芍薬を手にしてやってきた。百日目の夜、芍薬を持った少将は橋ごと流されて亡くなってしまった。小野小町は99本の芍薬を移植し、その芍薬一本一本に和歌を捧げて供養した。
実植えして九十九本のあなうらに 法実歌のみたへな芍薬
中国では、別れの時に芍薬(花)を贈る習慣がある。