初夏の季語 棕櫚の花
ヤシ目ヤシ科シュロ属の植物の総称が「シュロ」であるが、「棕櫚の花」は、日本各地で見られる「ワジュロ(和棕櫚)」を詠むことが多い。ワジュロは日本原産とも、平安時代に中国から持ち込まれ九州に定着したとも言われ、現在では東北地方でも栽培されている。
中国から持ち込まれたものを「トウジュロ(唐棕櫚)」として区別する場合がある。この場合、葉柄が長く、葉が垂れ下がりやすいものが「ワジュロ」である。
栽培されたものではなく、林内などに野性化したものは、「ノジュロ」「ノラジュロ」と呼ぶ。
雌雄異株で、雌株は5月頃に粟状の黄色い花をつける。
俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部四月に、「椶櫚の花(しゆろのはな・すろのはな)」として掲載され、「かたち、魚腹のはらめるが如し。これを椶魚(そうぎょ)、また椶笋(そうじゅん)といふ」とある。
関連季語に「棕櫚剥ぐ」があり、冬の季語になる。幹を包む「シュロ皮」を剥ぐ作業のことをいうが、このシュロ皮は、縄・タワシ・ホウキなどに加工される。
鐘を撞く「撞木」には、撞いた時の音色の良さから、棕櫚の木が使われることが多い。
棕櫚の花言葉は「勝利」である。古代ギリシャでは、勝者に、オリーブの冠とともに棕櫚の枝が贈られたという。
【棕櫚の花の俳句】
吾も亦愛す吾廬や棕櫚の花 正岡子規