季語|蘆の花(あしのはな)

仲秋の季語 蘆の花

蘆の花イネ科ヨシ属ヨシの花のことで、「蘆」「葦」「芦」「葭」と書いて「よし」とも読むが、古名は「あし」。平安時代から、「悪し」につながることから「良し」に掛けて「よし」と呼ばれるようになったとされる。関西では、金銭を意味する「おあし」に通じるために、現在でも「あし」と呼ぶ。因みに、穂が出ていないものを「芦」、穂が出ているものを「葦」とする。

蘆は、全国の水辺に自生する多年草で、8月から10月頃に褐色を帯びた花を咲かせ、熟すと白い穂が出てのような佇まいになる。他の植物の成長を阻害する物質を出すため、大きな純群落となることが多い。

日本では、神話の時代から親しまれてきた植物であり、地上世界を葦原中国(あしはらのなかつくに)と呼び、古事記では天孫が治める国を「豊葦原の千秋長五百秋の水穂国(とよあしはらのちあきながいおあきのみずほのくに)」と呼んだ。また、国造りの際に最初に生まれた御子神・水蛭子を、葦船に入れて流したという記述もある。
万葉集には「あし」として51首が歌われ、志貴皇子には

葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて 寒き夕は大和し思ほゆ

がある。
世界的にも蘆は古くから親しまれてきた植物であり、旧約聖書には、迫害から逃れさせるために、生まれたばかりのモーセを葦船に乗せて流したという話がある。また、パスカルの「人間は考える葦である」という言葉はよく知られている。

【蘆の花の俳句】

柴又へ通ふ渡しや蘆の花  正岡子規

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