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百合山羽公 

初釜にスカート緑濃き乙女 
桃冷す水しろがねにうごきけり 
老の眼の僅かにたのし青蜜柑 
火事を噴きあげては町の密集す 
退院すエイプリルフールに先んじて 
また過ぎぬ鏡開の一日も 
正月の凧や子供の手より借り 
罪を負ふごとく百足の逃げ惑ふ 
蟻のごとき塚掘り学徒水を呑む 
隼の落暉に燃ゆる瞳に逢へる 
花烏賊を煮て吹き降りの夕べなり 
砂丘つみ重ねて僅か松露あり