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阿部みどり女 

空蝉のいづれも力抜かずゐる 
初冬の大塵取に塵少し 
九十の端を忘れ春を待つ 
かつぎ持つ裏は淋しき熊手かな 
初鶏にこたふる鶏も遠からぬ 
小波の如くに雁の遠くなる 
冬の蜂勢ひを玻璃にとりもどし 
啓蟄や幼児のごとく足ならし 
朝よりは宵の香うすき花蜜柑 
月下美人力かぎりに更けにけり 
北上の空に必死の冬の蝶 
空一杯鰯雲なり夢の中 
啓蟄のカーテン引けば常の夜 
天上をさして揃ひぬ箒草 
金縷梅の折口白し墓地を行く 
この中のかたき実に触れ棉の花 
満天星の花より蜂の大きけれ 
リラの花朝も夕べの色に咲く