俳句

石山の石より白し秋の風

いしやまの いしよりしろし あきのかぜ

奥の細道の名句|白さの本質

石山の石より白し秋の風松尾芭蕉、1689年(元禄2年)の「おくのほそ道」の「那谷」に現れる句。曾良旅日記では、8月5日(新暦9月18日)に、「朝曇。昼時分、翁・北枝、那谷へ趣」とある。
石山とは、近江の石山寺で、天然記念物に指定されている硅灰石がその名の由来となっている。芭蕉も度々参拝し、「石山の石にたばしる霰かな」などの名句を生み出している。陰陽五行説で秋には白色が当てられるため、秋の風は「白風」ともいう。芭蕉の詠んだこれは、「色なき風」とも呼ばれる秋風の白さ。

奥細道菅菰抄(簑笠庵梨一1778年)には、「那谷の風景、石山に似て、石山より寂し。石岩は皆山に添て、其色曝て白し」とあり、那谷(現:石川県小松市那谷町)の風景に、石山寺の景色を思い出して詠まれたものだと考えられている。


意味は、「ここに吹く秋の風は、白いものの代表のように思っていた石山寺の石よりも白いものだな…」といった感じか。
白は「潔白」を表す色でもあり、仏の御許にある石よりも、秋風はさらに清らかであることを表現している。畳みかけるように響く、母音の「i」が印象的な句である。

以下「おくのほそ道」より。

山中の温泉に行ほど、白根が嶽跡にみなしてあゆむ。左の山際に観音堂あり。花山の法皇、三十三所の順礼とげさせ給ひて後、大慈大悲の像を安置し給ひて、那谷と名付給ふと也。那智・谷汲の二字をわかち侍しとぞ。奇石さまざまに、古松植ならべて、萱ぶきの小堂、岩の上に造りかけて、殊勝の土地也。
 石山の石より白し秋の風

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