俳句

山路来て何やらゆかしすみれ草

やまじきて なにやらゆかし すみれぐさ

大津へ向かう山の中で詠まれたとされる芭蕉句

山路来て何やらゆかしすみれ草貞享2年3月上旬(1685年4月)、「野ざらし紀行」の旅において、京都から大津に抜ける山路で詠まれた句。
季節は「菫草」で春。「ゆかし」は心ひかれる様を表し、「山路に入って菫草を見つけて、なんとなく懐かしい気持になってきた」というような意味になる。芭蕉初の紀行文が成った「野ざらし紀行」の旅は、大きな飛躍が見られた旅で、その手ごたえをつかんだ句だとも言えるだろう。

「野ざらし紀行」には「山路来て何やらゆかしすみれ草」で載るが、「熱田皺筥物語」(扇川堂東藤1696年)に、「白鳥山」の前書きで、「何とはなしになにやら床し菫草」とあり、元は名古屋の熱田神宮で詠まれたものとの説がある。貞享2年(1685年)5月12日付の千那宛の書簡には「山路来て何やらゆかしすみれ草」とある。
去来抄」(向井去来)に、菫と山のとりあわせについての議論があることでも有名で、歌学では菫と山のとりあわせはないという湖春を去来は論破している。

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