三夏の季語 蛇
トカゲと同じ有鱗目に属す爬虫類で、ヘビ亜目に分類される。日本には36種類が生息し、ニホンマムシ・ヤマカガシ・ハブなどの毒蛇や、最大2メートルにもなるアオダイショウ、縦縞が特徴的なシマヘビなどがよく知られている。
蛇は、トカゲから進化したと考えられており、足の痕跡が見られるものもある。ヤコブソン器官という嗅覚を司る器官があり、そこに匂いの粒子を送りこむために、蛇は舌を出し入れする。
冬眠する蛇は、「蛇穴に入る」が秋の季語に、「蛇穴を出づ」が春の季語になっている。冬眠のタイミングは種類によって異なるが、マムシでは、11月頃から3月頃が冬眠期間である。
古事記には、「虵(へみ)」の記述が2か所にある。ひとつは、スサノオがオオクニヌシを蛇の室に入れて試練を与える箇所。もうひとつは、垂仁天皇が、首に錦色の蛇がまとわりつく夢を見たという箇所。これは、反逆の予知夢であった。
さらに日本神話をさかのぼれば、ヤマタノオロチが登場するが、「オロチ」とは大蛇のことである。垂仁記の「本牟智和気の御子」の項には、御子の結婚相手が「虵(をろち)」だったという話が出てくる。
日本書紀(崇神紀)には、奈良の大神神社の御祭神・大物主が小蛇であったことが記されている。それに驚いた妻の倭迹迹日百襲姫命(やまとととびももそひめのみこと)は、箸で陰を突いて死に、箸墓に葬られた。
世界を見ても、創世記のアダムとイブの話に見られるように、古くから重要な場面に登場し、「生と死の象徴」「豊穣の象徴」「神の使い」などとして扱われている。
「蛇」からくる慣用句なども多く「蛇に睨まれた蛙」「蛇行」「蛇足」などがある。
【蛇の俳句】
形而上学二匹の蛇が錆はじむ 鳴戸奈菜