初夏の季語 朴の花
モクレン科モクレン属ホオノキは、南千島から九州の山間部に自生する落葉高木で、日本固有種とも言われている。5月から6月頃に、日本に自生する樹木の中では最大級となる、芳香のある花をつける。
アサ科エノキ属エノキ(榎)も「朴」と書く場合があるが、「朴の花」と言った場合はホオノキの花を指す。エノキの花は「榎の花」で夏の季語になる。
川端茅舎の俳句から、「朴散華」という季語も生まれた。花は散るには散るが、茅舎が「朴散華即ちしれぬ行方かな」と詠んだように、華やかなものではない。むしろ、「朴の花」の形態を「蓮」に見立てて造語したものだろう。
かつて朴葉は食べ物を包むのに使われ、そのために「ほお」の語源は「包(ほう)」にあるとの説がある。万葉集に朴葉を「ほほがしは」として歌った和歌が二首あるが、朴の花を歌ったものはない。
「朴の花」は高所に上向いて咲くため、大きさの割に見つけにくい花である。
【朴の花の俳句】
朴散華即ちしれぬ行方かな 川端茅舎
三つ咲いて空を占めたる朴の花 岸田稚魚