季語|鈴虫(すずむし)

初秋の季語 鈴虫

鈴虫の俳句と季語直翅目バッタ目コオロギ科の昆虫。松虫と鈴虫の名は、時代や地域によって錯綜している。一説には、日本で松虫と呼ぶものが中国で鈴虫と呼ばれており、平安時代には中国に倣っていたとも言われる。俳諧歳時記栞草の出た江戸時代中期には、今のように呼ばれていたが、「今俗に、リンリンと鳴くを鈴虫といふはわろし、これ松虫也といへり。鈴虫は、チンチロリと鳴をいふといへり」との記述も見える。
源氏物語第三十八帖「鈴虫」では、鈴虫と松虫に言及されており、

おほかたの秋をば憂しを知りにしを ふり捨てがたき鈴虫の声
心もて草のやどりをいとへども なほ鈴虫の声ぞふりせぬ

の歌も載る。ここでの鈴虫は「松虫」のことだと言われているが、松虫を「命のほどはかなき虫」とし、鈴虫を「心やすく、今めいたる」と表現しているところを見ると、通説に疑問を感じる。当時も、現在と同じ呼び方がされていたのではなかろうか。

成虫は8月中旬から9月にかけて出現し、オスの鳴き声は「リンリン」と聞きなし、文部省唱歌の「虫のこえ」にも歌われる。その鳴き声が鈴の音に似ていることから「鈴虫」と呼ばれている。

源氏物語にもあるように、古くから、鑑賞のために庭に放たれたり、籠で飼われたりしていた。
松虫はイネ科植物に産卵するのに対し、鈴虫は土の中に産卵する。そのため、飼育に植物を要する松虫よりも繁殖は簡単で、育てやすい。

【鈴虫の俳句】

鈴虫を塞ぎの虫と共に飼ふ  草間時彦

【鈴虫の鳴き声】
北海道にいるものは移入されたものであるが、日本全国に生息し、7月下旬から9月末まで鳴き声を聞くことが出来る。「鳴く虫の王」とも呼ばれ、オスのみが翅をこすり合わせて鳴く。(YouTube 動画)

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