初夏の季語 風薫る
初夏の風は、花や草の香りを含んで爽やか。「風薫る五月」ともいう。
「風薫る」は「薫風」からきており、「円機活法」に、転結を柳公権に任せた唐文宗の詩がある。
人皆苦炎熱
我愛夏日長
薫風自南来
殿閣生微涼
皇帝が、夏の暑さに苦しむ中にも夏を愛でるという詩であり、後に蘇東坡が民衆側に立って批判したが、大慧禅師はこの詩から悟りを得たという。煩悩を捨て去った境地を「薫風」に見たのである。
日本においては俳諧で好んで使われ、夏の季語として定着したが、鎌倉時代の和歌に散見されるものはやや違う。続拾遺集には藤原良教の
風かをる木のした道は過ぎやらで 花にぞくらす志賀の山越
が載る。これは、藤原定家の
袖の雪空ふく風もひとつにて 花ににほへる志賀の山越
に対応するように、春の歌としての位置付けである。
【風薫るの俳句】
風薫る羽織は襟もつくろはず 松尾芭蕉
国なまり故郷千里の風かをる 正岡子規