初秋の季語 葛の花
マメ科クズ属クズは、北海道から九州までの荒れ地などに自生する蔓性の多年草で、8月中旬から9月頃に花をつける。秋の七草のひとつである。
花は紫色で芳香を持つが、白花のシロバナクズや、桃色のトキイロクズもある。花を乾燥させると、葛花(かっか)という生薬になる。イソフラボンを含み、二日酔いに効くとされる。
葛は、古くから食用や薬用に用いられた有用植物であるが、繁殖力が強く、世界の侵略的外来種ワースト100に指定されており、海外では駆除の対象となっている。
大和国吉野の国栖(くず)が葛粉の産地だったことから「くず」と呼ばれるようになったとされる。日本書紀(神武紀)には、即位前の神武天皇の軍隊が、大和葛城で葛(かづら)の網を用いて、敵である土蜘蛛を倒した話が記録されている。ただし、この「葛(かづら)」とは、蔓草の総称だと考えられている。
万葉集には葛を歌ったものが二十一首あるが、葛の花を歌ったものは秋の七草の起源となった山上憶良の和歌のみである。
俳諧歳時記栞草(1851年)では、「葛の花」は夏之部六月に分類されている。
【葛の花の俳句】
人の身にかつと日当る葛の花 飯島晴子