三夏の季語 火取虫
火蛾(ひが・ほが・ひとりむし・かが)・灯虫(ひむし)・燈蛾(ひとりが・とうが)
夏の夜、灯火に集まってくる昆虫の事を火取虫というが、特に蛾のことをいう。俳諧歳時記栞草には、火蛾を「ひとりむし」と読ませ、六月に分類。「夏の夜、燈燭をみる時は、火を奪はんとほりするがごとく、数回りて終に燈油中に投て死す。故に愚人、色欲・貪欲の為に身命を抛つ、以て燈蛾に譬ふ。」とある。
虫が光に寄せられることを走光性というが、走行性の理由について明確に説明されたものはない。一般には、夜間の方向性をつかむために月あかりを利用していた虫が、人間の活動とともに灯火に集まるようになったと言われている。なお、昆虫に見える光は紫外線と近紫外線に限られており、光の波長を調整できるLEDを利用し、虫を呼びにくい灯火も開発されている。
【火取虫の俳句】
灯取虫這ひて書籍の文字乱れ 高浜虚子
灯虫さへすでに夜更のひそけさに 中村汀女