鈴木真砂女 ●
アパートがつひの棲家か木の芽和 季桃の花空の重たき日なりけり 季しばらくは職なき衣更へにけり 季立秋や雲の上行く雲とほく 季ある朝の帰燕高きを淋しめり 季二三日なまけごころや蓼の花 季湯豆腐や男の歎ききくことも 季老いてなほ漁師たくまし根深汁 季ふるさとの町に坂無し冬椿 季石蕗咲いていよいよ海の紺たしか 季初凪やもののこほらぬ国に住み 季俎始鯛が睨を効かせけり 季村百戸海老を栄螺を初荷とす 季まゆ玉のもつれもみせずしだれけり 季初鴉波高ければ高く飛び 季羅や人かなします恋をして 季来てみれば花野の果ては海なりし 季当てつけに死んでやらうか万愚節 季あるときは船より高き卯浪かな 季 (生簀籠)●鮪糶る男の世界覗きけり 季鮪より旬の秋鯖食うぶべし 季飛魚の干物にされてしまひけり 季真中に鮑が坐る夏料理 季九十年生きし春着の裾捌き 季梅雨寒や口さみしさの飴含み 季うそ寒やひともすまでの部屋の闇 季蛍袋は愁ひの花か上向かず 季襟元に風の小寒き雛流す 季海老網を繰るや満天星の下 季清明の水菜歯ごたへよかりけり 季鯛よりも目刺のうまさ知らざるや 季気がかりな空を気にして夜濯ぐ 季
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