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桂信子 

きさらぎをぬけて弥生へものの影 
こころ澄む日のまれにして春の蝉 
夕風にととのふ鉦や祭鱧 
竹皮を脱ぐひとときの無風かな 
初秋のまひるまぶしき皿割りぬ 
やはらかき身を月光の中に容れ 
鳥けものまはりに遊び川施餓鬼 
雁なくや夜ごとつめたき膝がしら 
電柱に手を触れてゆくいなご捕り 
大津絵の鬼が手を拍つ紅葉山 
長考は山の芋より始まりぬ 
壁うつす鏡に風邪の身を入るる 
賀状うづたかしかのひとよりは来ず 
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 
ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ 
たてよこに富士伸びてゐる夏野かな 
窓の雪女体にて湯をあふれしむ 
ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜 
ごはん粒よく噛んでゐて桜咲く 
ひととゐて春の暖炉に言つつしむ 

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