桂信子 ●
きさらぎをぬけて弥生へものの影 季
こころ澄む日のまれにして春の蝉 季
夕風にととのふ鉦や祭鱧 季
竹皮を脱ぐひとときの無風かな 季
初秋のまひるまぶしき皿割りぬ 季
やはらかき身を月光の中に容れ 季
鳥けものまはりに遊び川施餓鬼 季
雁なくや夜ごとつめたき膝がしら 季
電柱に手を触れてゆくいなご捕り 季
大津絵の鬼が手を拍つ紅葉山 季
長考は山の芋より始まりぬ 季
壁うつす鏡に風邪の身を入るる 季
賀状うづたかしかのひとよりは来ず 季
ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 季
ひとづまにゑんどうやはらかく煮えぬ 季
たてよこに富士伸びてゐる夏野かな 季
窓の雪女体にて湯をあふれしむ 季
ゆるやかに着てひとと逢ふ蛍の夜 季
ごはん粒よく噛んでゐて桜咲く 季
ひととゐて春の暖炉に言つつしむ 季
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三省堂書店オンデマンドふらんす堂 桂信子文集
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