橋本多佳子 ●
雉啼くや胸ふかきより息一筋 季雀の巣かの紅糸をまじへをらむ 季いづこにもいたどりの紅木曾に泊つ 季炎天の梯子昏きにかつぎ入る 季生き堪へて身に沁むばかり藍浴衣 季鵜の篝夜の殺生の明々と 季祭笛吹くとき男佳かりける 季あぢさゐやきのふの手紙はや古ぶ 季梶の葉の文字瑞々と書かれけり 季雄鹿の前吾もあらあらしき息す 季さびしさを日日のいのちぞ雁わたる 季白桃に入れし刃先の種を割る 季深裂けの柘榴一粒だにこぼれず 季くらがりに傷つき匂ふくわりんの実 季オリオンの盾新しき年に入る 季いなびかり北よりすれば北を見る 季 (紅絲)●乳母車夏の怒濤によこむきに 季たんぽぽの花大いさよ蝦夷の夏 季凍蝶に指ふるるまでちかづきぬ 季菖蒲園かがむうしろも花昏れて 季麦秋や乳子に嚙まれし乳の創 季蓮散華美しきものまた壊る 季海燕霧の停船夜となりぬ 季法師蝉友蝉ゐねばこゑとぎれ 季伏目に読む睫毛幼し露育つ 季鱗雲ことごとく紅とこから暮る 季干大根人かげのして訪はれけり 季蛇いでてすぐに女人に会ひにけり 季春の暮白き障子を光とし 季恋猫のかへる野の星沼の星 季仏母たりとも女人は悲し灌仏会 季枯れはてて遊ぶ狐をかくすなき 季道の辺の小さき祠も藤を垂れ 季草静か刃をすゝめゐる草刈女 季花椎やもとより独りもの言はず 季目つむれば鉦と鼓のみや壬生念仏 季つづみうつ肉手丁々都踊 季
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