晩夏の季語 夕顔
「夕顔の実」は秋の季語であり、かんぴょうの原料となる。「夕顔」ではその花を指し、夏の季語となる。ちなみに、秋の季語となる「朝顔」はヒルガオ科サツマイモ属であるが、「夕顔」はウリ科ユウガオ属である。瓢箪は夕顔の変種である。
実の形によって、細長い「ナガユウガオ」と、丸みを帯びた「マルユウガオ」とに大別される。
夏の夕方に白い花を咲かせるところから夕顔といい、翌日の午前中まで咲いている。北アフリカまたはインドが原産地とされ、古くから日本に渡来していたと考えられている。
清少納言は、花はともかくも、鬼灯に似た実を好ましく思わず、枕草子に、
夕顔は花のかたちも朝顔に似て、言ひ続けたるにいとをかしかりぬべき花の姿に、実の有様こそいとくちをしけれ。などて、さはた生ひ出でけむ。ぬかづきといふ物のやうにだにあれかし。されどなほ夕顔といふ名ばかりはをかし。
とある。このように、かつては卑俗な地位に甘んじていたが、源氏物語で名を上げる。
源氏物語では「夕顔」の巻に、垣根の夕顔に目が留まり出会った女性との話が出てくる。夕顔は、凡河内躬恒の「心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花」を本歌取して和歌を贈り、それに光源氏の返歌がつく。
心あてにそれかとぞ見る白露の 光添へたる夕顔の花
寄りてこそそれかとも見めたそかれに ほのぼの見つる花の夕顔
しかし夕顔は、逢引きした某院で魔物に襲われてはかなく死んでしまう。
【夕顔の俳句】
夕貌や妹見ざる間に明けわたる 高桑闌更
夕がほや月の鏡もまたでさく 横井也有