初夏の季語 牡丹
ぼうたん・白牡丹(はくぼたん)・緋牡丹(ひぼたん)・牡丹園(ぼたんえん)・深見草(ふかみぐさ)・鎧草(よろいぐさ)
花王とも呼ばれ、中国では古代よりもっとも親しまれてきた花である。隋の煬帝や、唐の則天武后が愛でたという伝説もある。根の樹皮は、「牡丹皮」として薬になる。日本には、天平時代に中国から入ってきたと見られている。李白は、楊貴妃を「花」として牡丹にたとえている。日本文学では「枕草子」に初出。古くは「ふかみ草」と言い、千載和歌集には賀茂重保の歌が載る。
人しれず思ふこころはふかみぐさ花咲きてこそ色に出でけれ
裏切りから身を滅ぼすことを指す「獅子身中の虫」という仏教用語があるが、牡丹の花の夜露はその薬となると言われ、獅子は牡丹の花から離れられない。それを基に、獅子に牡丹をあしらった芸術作品が数多く存在する。
「ボタン」は、漢語「牡丹」から来ている。接ぎ木で増やされたため「牡(オス)」の植物とみなされ、それに赤を表す「丹」をつけて表現された。つまり「赤い男」である。5月頃に見頃となるため、夏の季語となる。