三夏の季語 夕立
夏の午後、強い日射により地面から上昇気流が生じ、積乱雲が生じて、時に雷・突風・雹を交えて、激しいにわか雨が降る。熱帯地方で発生するスコールと、同じようなものである。
梅雨明けから秋雨が降るまでの間の夕方の雨を、「夕立」と呼ぶことが普通であった。しかし、温暖化の影響からか、夕立の降る期間が長くなっているような印象を受ける。
「夕立つ」が名詞化して「夕立」になったとされ、夕方に風や雲が起こり立つことに誘発される雨である。
万葉集には、夕立の後の涼しさを歌った小鯛王の
夕立の雨うち降れば春日野の 尾花の末の白露思ほゆ
がある。また、新古今和歌集では、西行法師の
よられつる野もせの草のかげろひて すずしくくもる夕立の空
などが知られる。
夕立は涼を呼ぶとともに、降り始めに立ちのぼる香りにも趣きがある。この、雨の匂いの元は、雷によって発生するオゾンや、土壌微生物が産出する揮発物質だと言われている。近年では、「ペトリコール」という、石のエッセンスを意味する造語で呼ばれている。
【夕立の俳句】
夕立や田を見めぐりの神ならば 宝井其角
桑海や大夕立あとなほけぶる 高浜年尾