晩春の季語 桃の花
「桃」といえば実を指し、秋の季語となる。また、桃の実に「白桃」があり、秋の季語ともなるが、白い花を咲かせる種類があり、「白桃」で花を指して、春の季語ともなる。
別名に三千世草(みちよぐさ)・三千歳草(みちとせぐさ)など。
桃は、バラ科モモ属の落葉小高木であり、花季は3月中旬から4月上旬。七十二候の「桃始笑」の頃咲き始めるため、現在の桃の節句には、花を見ることはない。
中国原産で、古代中国で第一番目の地位を得ていた桃は、多くの漢詩にも詠み込まれている。その代表は、代表的な祝婚歌とされる「詩経」の「桃夭」であろう。
桃之夭夭 灼灼其華
之子于帰 宜其室家
桃之夭夭 有蕡其実
之子于帰 宜其家室
桃之夭夭 其葉蓁蓁
之子于帰 宜其家人
万葉集では、大伴家持の
春の園紅にほふ桃の花 下照る道に出で立つをとめ
がよく知られている。また作者不詳ではあるが、
桃染めの浅らの衣浅らかに 思ひて妹に逢はむものかも
は、桃の花の色を、浅はかな色であると言っている。
桃と桜は見分けにくいが、桃の花弁には切れ込みがなく、やや尖ったイメージがある。また、花と同時に葉もつける。
【桃の花の俳句】
此ごろは夜雨夜雨や桃のはな 久村暁台
烈風や月下にさはぐ緋桃あり 原石鼎