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富田木歩 

我が肩に蜘蛛の糸張る秋の暮 
仕掛花火のけぶり流るゝ街の空 
お針子の膝まで日ざす寒椿 
夢に見れば死もなつかしや冬木風  (定本木歩句集)
朝顔や女俳人の垣穂より 
十五夜や母の薬の酒一合 
嫁入りを見に出はらつて家のどか 
明け寒き嵐の中の鷄の聲 
かそけくも咽喉鳴る妹よ鳳仙花 
枸杞茂る中よ木歩の残り居る 
水のしらみもなく螢火ひとつ過ぐ 
暴れ空の暮れゐて赤し鳳仙花 
汽車音の若葉に籠る夕べかな  (小さな旅)
墓地越しに町の灯見ゆる遠蛙 
軒風呂も寒からず雪の下咲いて