富田木歩 ●
我が肩に蜘蛛の糸張る秋の暮 季仕掛花火のけぶり流るゝ街の空 季お針子の膝まで日ざす寒椿 季夢に見れば死もなつかしや冬木風 季 (定本木歩句集)●朝顔や女俳人の垣穂より 季十五夜や母の薬の酒一合 季嫁入りを見に出はらつて家のどか 季明け寒き嵐の中の鷄の聲 季かそけくも咽喉鳴る妹よ鳳仙花 季枸杞茂る中よ木歩の残り居る 季水のしらみもなく螢火ひとつ過ぐ 季暴れ空の暮れゐて赤し鳳仙花 季汽車音の若葉に籠る夕べかな 季 (小さな旅)墓地越しに町の灯見ゆる遠蛙 季軒風呂も寒からず雪の下咲いて 季
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