野見山朱鳥 ●
絶命の寸前にして春の霜 季少年に獣の如く野火打たれ 季かなしみはしんじつ白し夕遍路 季春落葉いづれは帰る天の奥 季裸子や涙の顔をあげて這ふ 季浜昼顔風に囁きやすく咲く 季曼珠沙華竹林に燃え移りをり 季寒紅や鏡の中に火の如し 季父母の炉に山河を越えて子等集ふ 季天の鷹雄のさびしさを高めつつ 季火を投げし如くに雲や朴の花 季生涯は一度落花はしきりなり 季秋風や書かねば言葉消えやすし 季曼朱沙華散るや赤きに耐えかねて 季眠りては時を失ふ薄氷 季つひに吾れも枯野のとほき樹となるか 季夕焼消え真紅の薔薇を抱き来し 季いのち短し泉のそばにいこひけり 季南風や故郷を恋へるギリシヤ船 季死後涼し光も射さず蝉も鳴かず 季みじろぎもせず炎昼の深ねむり 季太郎鮫血祭にして磯びらき 季初雪は隠岐に残れる悲歌に降る 季射すひかり石を包みてあたたかし 季金の斧手に春雷の中に立つ 季病むことは生死の対話春蚊出づ 季花蜜柑絶命の文字石に濃し 季不知火を見る丑三の露を踏み 季
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