原石鼎 ●
下萌に明さあるごと昼の月 季若駒の親にすがれる大き眼よ 季青天や白き五弁の梨の花 季母すでに昼寝覚めたる流し元 季頂上や殊に野菊の吹かれ居り 季 (ホトトギス)●淋しさに又銅鑼打つや鹿火屋守 季松朽ち葉かゝらぬ五百木無かりけり 季山国の闇恐ろしき追儺かな 季たにぐゝの日ねもすなきぬお中日 季木蓮の軒くらきまで咲にけり 季みちのくは小家小家の鯉幟 季草原へ投網なげ干し麦の秋 季葛引くや朽ちて落ちたる山筧 季梅雨凝つて四山暗さや軒雫 季夕立や簾つらねて灯の館 季蔓踏んで一山の露動きけり 季絣着ていつまで老いん破芭蕉 季中天の日の光浸み枯尾花 季雪解や西日かゞやく港口 季烈風や月下にさはぐ緋桃あり 季秋風や模様の違ふ皿二つ 季鹿垣の門鎖し居る男かな 季 (ホトトギス)空山へ板一枚を荻の橋 季 (ホトトギス)山川に高浪も見し野分かな 季山の日に萩にしまりぬ便所の戸 季 (ホトトギス)鉞に裂く木ねばしや鵙の声 季 (ホトトギス)何萬の引鴨と舸夫の言ひあひぬ 季眼のあたり怒濤相うつ日覆かな 季白日にたまむしとべる緋鯉かな 季鞠のごとく狸おちけり射とめたる 季花烏賊の腸ぬくためや女の手 季桜烏賊つぶてのごとくつれにけり 季白栄やある夜の雲の霽れぎはに 季黒栄に水汲み入るゝ戸口かな 季そこはかと暮るゝ日ありぬ衣紋掛 季捨扇万朶の露の下にかな 季故人思ふや風炉の名残りを妻と居て 季穂の出来ていよゝさみしき穭かな 季青帝起つて日に六の花をはなちけり 季鮠つるや水輪相つぐ夕流れ 季
『中古』前田普羅/原石鼎 (新学社近代浪漫派文庫)6468円(税込/送料別)カード利用可・海外配送不可・翌日配送不可「初版発行日」2007/03/01 「著者」前田 普羅 (著) 「出版社」新学社 【KSC】