前田普羅 ●
うしろより初雪降れり夜の町 季
雪卸し能登見ゆるまで上りけり 季
雪解川名山けづる響かな 季
秋草に子は休らへり父も亦 季
人殺ろす我かも知らず飛ぶ螢 季
落ち落ちて鮎は木の葉となりにけり 季
探梅の人が覗きて井は古りぬ 季
寒雀身を細うして闘へり 季
万座より落せる水の白菖蒲 季
花桐や重ね伏せたる一位笠 季
梅雨の海静かに岩をぬらしけり 季
三度炊きて遅日まだある大寺哉 季
春雪に面あぐれば鷹が峯 季
雪つけし飛騨の国見ゆ春の夕 季
日除して青田に沈む小家かな 季
霜つよし蓮華とひらく八ケ岳 季
月さすや沈みてありし水中花 季
立山のかぶさる町や水を打つ 季
山吹や昼をあざむく夜半の月 季
乗鞍のかなた春星かぎりなし 季
襟巻の中からのぞく野の夕日 季
大寺のうしろ明るき梅雨入かな 季
梅雨あけて奥の山より一つ蝉 季
和蘭の艦が去んでもコレラかな 季
咲きやんで雛罌粟雨に打たれ居り 季
山桃の日蔭と知らで通りけり 季
秋薊千種の上に倒れけり 季
秋草にまじりて高し花茗荷 季
冬至湯の煙あがるや家の内 季
榾を折る音ばかりして父と母 季
春更けて諸鳥啼くや雲の上 季
春尽きて山みな甲斐に走りけり 季
うらがへし又うらがへし大蛾掃く 季
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