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福永耕二 

切株がいつものわが座囀れり 
黒板にわが文字のこす夏休み 
旅人として花茣蓙の端に座す 
泳ぎ来し髪をしぼりて妻若し 
蛍火やまだ水底の見ゆる水 
花栗や夢のなごりの盗汗拭く 
昼顔や捨てらるるまで櫂痩せて 
こころ足る日は遠出せず花葵 
萍の裏はりつめし水一枚 
紅葉して桜は暗き樹となりぬ 
落葉松を駈けのぼる火の蔦一縷 
鳳仙花がくれに鶏の脚あゆむ 
切株のはなればなれに霜を待つ 
火事を見し昂り妻に子に隠す 
寒木瓜や人よりも濃き土の息 
新宿ははるかなる墓碑鳥渡る  (踏歌)
海棠のしたたる雨となりしはや 

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