俳句

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石田波郷 

バスを待ち大路の春をうたがはず  (鶴の眼)
低頭せり年酒の酔の果にして 
雁やのこるものみな美しき  (病鴈)
霜の墓抱起されしとき見たり  (惜命)
今生は病む生なりき鳥頭  (酒中花以後)
あえかなる薔薇撰りをれば春の雷  (鶴の眼)
手花火を命継ぐ如燃やすなり  (春嵐)
田楽に舌焼く宵のシュトラウス 
とまり木に隠れごころや西行忌 
捕虫網踏みぬ夜更けの子の部屋に 
雨がちに端午ちかづく父子かな 
万緑を顧みるべし山毛欅峠 
名月や門の欅も武蔵ぶり 
草負うて男もどりぬ星祭 
森を出て会ふ灯はまぶしくつわ虫 
朝顔の紺の彼方の月日かな 
露草の露ひかりいづまことかな 
篁の鉾ゐならべり冬構 
寒菊や母のやうなる見舞妻 
琅玕や一月沼の横たはり 
いつまでも老いぬあはれや切山椒 
うらわかき膝しづまれり初茶の湯 
鷽ひとつ替ふることなく書架にあり 
鳩とゐて朝焼雀小さしや 
プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ 
枯草原白猫何を尋ねゆくや 
妻よ我が短日の頬燃ゆるかな 
春驟雨木馬小暗く廻り出す 
跫音高し青きジャケツの看護婦は 
冷し酒夕明界となりはじむ 
雀らも海かけて飛べ吹流し 
病室に降る煤のあり半夏生 
蚊を打つて頬やはらかく癒えしかな 
悉く遠し一油蝉鳴き止めば 
驟雨過の松の点滴浴びゆくや 
かなかなや永睡りせし巌の上 
立冬や窓搏って透く鵯の羽根 
スチームやともに凭るひと母に似し 
寧き夜を賜へ時かけて蜜柑食ふ 
ひとの家を更けてたちいで酉の市 
浅間山空の左手に眠りけり 
春雪三日祭りの如く過ぎにけり 
春夕べ襖に手かけ母来給ふ 
小名木川駅春の上潮曇るなり 
煤煙急ぎ雲はしづかに朝焼けぬ 
古郷忌の風あそばすも古簾 
年の夜やめざめて仰ぐ星ひとつ 
衰ふや一椀おもき小正月 
はこべらや焦土のいろの雀ども 
雷の下キヤベツ抱きて走り出す 
秋の暮業火となりて秬は燃ゆ 
汗垂れて彼の飲む焼酎豚の肝臓 
ひとつ咲く酒中花はわが恋椿 
水中花培ふごとく水を替ふ 
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ 
葛咲くや嬬恋村の字いくつ 
百万の焼けて年逝く小名木川 
病床に鉛筆失せぬ夏の暮 
射干も一期一会の花たらむ 
汗のハンケチ友等貧しさ相似たり 
四迷忌や借りて重ねし書少し 
げぢげぢを躓き追ふや子と共に 
病室の隅の未明やアマリリス 
萩青き四谷見付に何故か佇つ 
居待月はなやぎもなく待ちにけり 
馬鈴薯の花の日数の旅了る 
濁酒や酔うて掌をやるぼんのくぼ 
勿忘草わかものの墓標ばかりなり 
サフランや読書少女の行追ふ目 
薄羽かげろふ翅も乱さず死せるかな 
海の鳥来て木隠りぬ朱欒の樹 
九年母や我孫子も雪となりにけり 
噴煙の燦たり樹々はいま黄ばむ 
年越や几の上に母の銭 
二重廻し夕映電車来て消えぬ 
足袋脱ぐやわが痩せし身を念ひいづ 
寒の鵙墓犇めきてあるばかり 
三月尽校塔松と空ざまに 
祝婚やミモザのもとに咳こぼし 
発心の小机作る雪の果 
花菜漬通ひ妻また病みて来ず 
茗荷竹百姓の目のいつまでも 

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