初夏の季語 薔薇
バラ科バラ属。園芸種は、世界中で最も親しまれている花のひとつで、6月の誕生花ともなっている。「いばら」の転訛から「ばら」と呼ぶ。
南半球に自生するものはなく、3千万年前から北半球のみに分布していたことが分かっている。日本では西洋のイメージが強いバラであるが、ヒマラヤ周辺に発生したと考えられており、現在の園芸種のバラは、ノイバラ・テリハノイバラ・ハマナシという日本原産種の血統を引くものが多い。
1867年にフランスで作られた「ラ・フランス」以降のバラをモダンローズ、それより前のバラをオールドローズとする。
薔薇は、四季を通じて花をつけ、冬の季語として冬薔薇もある。夏に花季を迎える一季咲の薔薇は、オールドローズ系。
「ギルガメシュ叙事詩」での記述が最も古いもので、以降、人類史を彩り続けている。クレオパトラもバラを愛したと言われており、バラの香油が使われた。
日本でも古くから親しまれてきたが、古代では、花よりもむしろ棘の方を取り上げることが多い。常陸国風土記には、穴に棲む佐伯を攻撃するために、黒坂の命が茨蕀を使ったとある。そこから茨城の郡が生じ、現在の茨城県につながっている。
木下長嘯子の挙白集には、
道のべのいばらの花の白妙に 色はえまさる夏の夜の月
があるが、近世までの日本では、薔薇と言えば白い花を咲かすノイバラが主であった。
なお、「俳諧歳時記栞草」四月条には、ノイバラを指す野薔薇とともに薔蘼(しやうび・さうび)の記載がある。「白黄紅紫の数色、百葉(やえ)、八出、六出のものあり」と出ている。
歴史に名を刻むものとしては、1455年からの薔薇戦争がある。ランカスター家が赤薔薇、ヨーク家が白薔薇を記章としていたので、この名がつく。