石川県内 俳句の舞台となった旅館
和倉温泉 加賀屋日本旅館の代表格としてあまりに有名な「加賀屋」だから、もちろん俳人にも馴染み深い。昭和24年4月26日には、高浜虚子が宿泊し、その時に詠まれた俳句「家持の妻恋舟か春の海」は、近くの弁天崎公園に句碑となって残されている。同行した虚子の次女星野立子は、「加賀屋にて句謠会あり余花の雨」と詠んでいる。水原秋桜子も、昭和31年10月26日に宿泊し、翌朝「能登島の横雲明くるわたり鳥」と詠んでいる。
石川県の御当地季語
加賀万歳(新春の季語)金沢市に伝わる伝統芸能で、不定期に開催されている。
平国祭(春の季語)3月18日から23日に開催される気多大社の神幸祭で、「おいで祭り」とも呼ぶ。
青柏祭(夏の季語)5月1日から5日に開催される大地主神社の例大祭で、「でか山」と呼ばれる山車が有名。ユネスコの無形文化遺産。
百万石祭(夏の季語)6月14日に近い6月第2土曜日に開催される「金沢百万石まつり」。前田利家が、1583年6月14日に金沢城に入城したことに因む。
白山一花(夏の季語)キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。白山で発見されたことから名がついた。
じぶ(冬の季語)「治部煮」ともいう、鴨肉などを煮た金沢市の郷土料理。
石川県を詠んだ俳句
むざんやな甲の下のきりぎりす 松尾芭蕉1689年(元禄2年)の「おくのほそ道」の「小松」、多田八幡で詠まれた。「平家物語」に出る斎藤実盛を詠んだもの。
しほらしき名や小松吹萩すゝき 松尾芭蕉「奥の細道」の「小松」に、「むざんやな~」の句に先じて「小松と云所にて」の前書きとともに載る。
山中や菊はたおらぬ湯の匂 松尾芭蕉「奥の細道」の「山中」に、「温泉に浴す。其功有明(有馬)に次と云。」の前書きとともに載る。山中温泉を詠んだもの。
終宵秋風聞くや裏の山 河合曾良「奥の細道」の「全昌寺・汐越の松」に載る。芭蕉と別れて一足先に伊勢に向かった曾良は、全昌寺にこの句を残し、芭蕉は翌日それを目にした。
卯の花や家を遶れば小さき橋 泉鏡花金沢市に生まれた泉鏡花。この俳句は七ヶ用水を詠んだものと考えられている。
何もかも映りて加賀の田植かな 飴山實小松市出身の飴山實の俳句。「辛酉小雪」(1981年)所収。