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杉田久女 ●

月の輪をゆり去る船や夜半の夏 季
秋の夜やあまへ泣き居るどこかの子 季
花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ 季 (ホトトギス)●
ぬかづけばわれも善女や仏生会 季
岐阜提灯庭石ほのと濡れてあり 季
遊船のさんざめきつつすれ違ひ 季
杉くらし仏法僧を目のあたり 季
よそに鳴る夜長の時計数へけり 季
白萩の雨をこぼして束ねけり 季
わが傘の影の中こき野菊かな 季
笑み解けて寒紅つきし前歯かな 季
わが歩む落葉の音のあるばかり 季
谺して山ほととぎすほしいまゝ 季●
新茶汲むや終りの雫汲みわけて 季
摘み摘みて隠元いまは竹の先 季
平凡の長寿願はず蝮酒 季
雛菓子に足投げ出せる人形たち 季
東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪 季
春雷や俄に変る洋の色 季
鳥雲にわれは明日たつ筑紫かな 季
茄子もぐや日を照りかへす櫛のみね 季
身の上の相似て親し桜貝 季
風に汲む筧も濁り花の雨 季
橡の実のつぶて颪や豊前坊 季
三山の高嶺づたひや紅葉狩 季
秋来ぬとサファイア色の小鯵買ふ 季
仰ぎ見る大注連飾出雲さび 季
逢ふもよし逢はぬもをかし若葉雨 季
菱の花引けば水垂る長根かな 季
柚の花の香をなつかしみ雨やどり 季
寂しがる庵主とありぬ唐菖蒲 季
不知火の見えぬ芒にうづくまり 季
葉がくれの星に風湧く槐かな 季
濃竜胆ひたせる渓に櫛梳り 季
病める手の爪美しや秋海棠 季
奉納のしやもじ新らし杉の花 季
すぐろなる遠賀の萱路をただひとり 季