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角川源義 

春の雲家禽のごとく尾長来る 
逃げ水や人を恃みて旅つづく 
潮しぶき来る北窓を塞ぎけり 
鳥影や遠き明治の冬館 
雪達磨目を喪ひて夜となる 
神留守の汐木を焚きて驕るかな 
一茶忌や雪とつぷりと夜の沼 
花あれば西行の日とおもふべし 
何求めて冬帽行くや切通し 
篁に一水まぎる秋燕 
一盞の冷酒に命あつきかな 
神の井やあかねにけぶる冬木の芽 
春一番奥の歯に蓄む貝の芯 
後の月雨に終るや足まくら 
鰯売る坂逆光に照り出さる 
巨き漢の尿は沼なす枯芭蕉 
月落ちて物の怪めくや鷺の声 
父祖の地や蜻蛉は赤き身をたるる 
まづ煮立つふぐのしらこを箸にせよ 
流氷来鴉おろおろ吹きもどる 
みちのくのたのしき友よ花水木 
黄金虫雲光りては暮れゆけり 
葬終へて庭広くなる蟻の塔 
竹煮草雨荒ければ汽車喘ぐ 
榛の花どどと嶺渡る夜の雷 
石仏の百態ぎぼしの花終る 
花たばこ空に明日あり便りまつ 
金盞花あまりし命何なさむ 
桜桃の花みちのべに出羽の国 
新社員ヒマラヤ杉のみどりの夜 

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