杉田久女 ●
月の輪をゆり去る船や夜半の夏 季秋の夜やあまへ泣き居るどこかの子 季花衣ぬぐやまつはる紐いろいろ 季 (ホトトギス)●ぬかづけばわれも善女や仏生会 季岐阜提灯庭石ほのと濡れてあり 季遊船のさんざめきつつすれ違ひ 季杉くらし仏法僧を目のあたり 季よそに鳴る夜長の時計数へけり 季白萩の雨をこぼして束ねけり 季わが傘の影の中こき野菊かな 季笑み解けて寒紅つきし前歯かな 季わが歩む落葉の音のあるばかり 季谺して山ほととぎすほしいまゝ 季●新茶汲むや終りの雫汲みわけて 季摘み摘みて隠元いまは竹の先 季平凡の長寿願はず蝮酒 季雛菓子に足投げ出せる人形たち 季東風吹くや耳現はるゝうなゐ髪 季春雷や俄に変る洋の色 季鳥雲にわれは明日たつ筑紫かな 季茄子もぐや日を照りかへす櫛のみね 季身の上の相似て親し桜貝 季風に汲む筧も濁り花の雨 季橡の実のつぶて颪や豊前坊 季三山の高嶺づたひや紅葉狩 季秋来ぬとサファイア色の小鯵買ふ 季仰ぎ見る大注連飾出雲さび 季逢ふもよし逢はぬもをかし若葉雨 季菱の花引けば水垂る長根かな 季柚の花の香をなつかしみ雨やどり 季寂しがる庵主とありぬ唐菖蒲 季不知火の見えぬ芒にうづくまり 季葉がくれの星に風湧く槐かな 季濃竜胆ひたせる渓に櫛梳り 季病める手の爪美しや秋海棠 季奉納のしやもじ新らし杉の花 季すぐろなる遠賀の萱路をただひとり 季
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『中古』花衣ぬぐやまつわる…(上) わが愛の杉田久女 (集英社文庫)5388円(税込/送料別)カード利用可・海外配送不可・翌日配送不可「初版発行日」1990/06/20 「著者」田辺 聖子 (著) 「出版社」集英社 【KSC】