三春の季語 霞
春になると、水蒸気などで遠くの景色が不明瞭になることが多い。「霞」は、気象観測において定義されていないために、気象用語ではない。夜の霞は「朧」という。
むかし霞と霧とに大きな区分はなかったが、古今集以降、春は「霞」、秋は「霧」と区別されるようになった。なお、「和名抄」に「霞は赤い雲気」とあり、夏の季語となる「朝焼け」「夕焼け」のことも、古くは中国に倣って「霞」の文字を用いた。「朝霞」「晩霞」の言葉もあるが、俳句では焼けの現象は指さない。
万葉集には、柿本人麻呂の歌で
ひさかたの天の香具山このゆふべ 霞たなびく春立つらしも
がある。
悩んだり、わだかまりがある状況を「霞」と表現することもある。浮世離れして清貧を貫くことを「霞を食う」と言ったり、一目散に走って姿を隠すことを「雲を霞」と言ったりもする。
【霞の俳句】
春なれや名もなき山の朝がすみ 松尾芭蕉