野ざらし紀行の日程表と句
「野ざらし紀行」は、1685年(貞享2年)に成立。芭蕉死後の1768年(明和5年)に刊行。真蹟本として、天理本と藤田本がある。芭蕉が定めたタイトルは無く、「甲子吟行」「芭蕉翁甲子の紀行」「芭蕉翁道乃紀」「草枕野ざらし紀行」などともいう。
貞享元年(1684年)秋から貞享2年(1685年)夏にかけての関西方面への旅の内容を記した紀行文で、門弟の苗村千里が、千里の故郷の大和国葛下の郡竹の内まで随行。天和3年(1683年)6月20日に亡くなった母の墓参も目的とした旅で、芭蕉はじめての紀行文となった。
道中、尾張連衆と歌仙を巻き、後に俳諧七部集の一つ「冬の日」が成るなど収穫の多い旅で、蕉風を確立した旅でもあった。
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貞享元年 (1684) |
8月中旬 | 江戸を発つ 野ざらしを心に風のしむ身哉(芭蕉)● 秋十とせ却て江戸を指古郷(芭蕉) |
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箱根の関 雰しぐれ冨士をみぬ日ぞ面白き(芭蕉) 深川や芭蕉を冨士に預行(千里) |
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冨士川 猿を聞人捨子に秋の風いかに(芭蕉) |
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大井川 秋の日の雨江戸に指おらん大井川(千里) 道のべの木槿は馬にくはれけり(芭蕉) |
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8月20日過 | 小夜中山 馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり(芭蕉) |
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8月30日 | 伊勢神宮外宮 みそか月なし千とせの杉を抱あらし(芭蕉) |
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西行谷の麓 芋洗ふ女西行ならば歌よまむ(芭蕉) 蘭の香やてふの翅にたき物す(芭蕉) |
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閑人の茅舎 蔦植て竹四五本のあらし哉(芭蕉) |
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9月初旬 | 故郷の伊賀上野 手にとらば消んなみだぞあつき秋の霜(芭蕉) |
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大和国葛下の郡竹の内 わた弓や琵琶になぐさむ竹のおく(芭蕉) |
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二上山當麻寺 僧朝顔幾死かへる法の松(芭蕉) |
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吉野山 砧打て我にきかせよや坊が妻(芭蕉) 露とくとく心みに浮世すゝがばや(芭蕉) |
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後醍醐天皇陵 御廟年経て忍は何をしのぶ草(芭蕉) |
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関ヶ原の常盤御前の墓 義朝の心に似たり秋の風(芭蕉) |
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不破の関 秋風や藪も畠も不破の関(芭蕉) |
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9月下旬 | 大垣 しにもせぬ旅寝の果よ秋の暮(芭蕉) |
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10月 | 桑名本當寺 冬牡丹千鳥よ雪のほとゝぎす(芭蕉) 明ぼのやしら魚しろきこと一寸(芭蕉) |
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熱田神宮 しのぶさへ枯て餅かふやどり哉(芭蕉) |
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名古屋周辺 狂句木枯の身は竹斎に似たる哉(芭蕉)● 草枕犬も時雨ゝかよるのこゑ(芭蕉) 市人よ此笠うらふ雪の傘(芭蕉) 馬をさへながむる雪の朝哉(芭蕉) 海くれて鴨のこゑほのかに白し(芭蕉) |
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12月末 | 故郷の伊賀上野 年暮ぬ笠きて草鞋はきながら(芭蕉) |
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貞享2年 (1685) |
正月 | 故郷の伊賀上野 誰が聟ぞ歯朶に餅おふうしの年(芭蕉) |
2月 | 奈良への道 春なれや名もなき山の薄霞(芭蕉)● |
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二月堂 水とりや氷の僧の沓の音(芭蕉) |
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2月下旬 | 京都の三井秋風の鳴瀧の山家 梅白し昨日ふや靏を盗れし(芭蕉) 樫の木の花にかまはぬ姿かな(芭蕉) |
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3月上旬 | 伏見西岸寺 我がきぬにふしみの桃の雫せよ(芭蕉)● |
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大津への道 山路来て何やらゆかしすみれ草(芭蕉)● |
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大津の本福寺別院 辛崎の松は花より朧にて(芭蕉)● |
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3月中旬 | 甲賀の水口 命二つの中に生たる櫻哉(芭蕉) |
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尾張への道中 いざともに穂麦喰はん草枕(芭蕉) 梅こひて卯花拝むなみだ哉(芭蕉) 白げしにはねもぐ蝶の形見哉(芭蕉) |
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熱田 牡丹蘂ふかく分出る蜂の名残哉(芭蕉) |
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4月 | 甲斐の山中 行駒の麦に慰むやどり哉(芭蕉) |
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4月末 | 深川の芭蕉庵 夏衣いまだ虱をとりつくさず(芭蕉) |
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野ざらし紀行中の世間の出来事
【貞享元年8月28日(1684年10月7日)】江戸幕府大老・堀田正俊が江戸城内で暗殺される。
【貞享元年10月21日(1684年11月27日)】紀州藩に徳川吉宗が生まれる。
【貞享2年2月中旬(1685年3月21日)】作曲家の大バッハがドイツに生まれる。