季語|姫始(ひめはじめ)

新春の季語 姫始

姫始その年はじめての性交を、近世以降「姫始」と呼ぶ。「姫」は「秘め事」に通じる。
俳諧歳時記栞草(1851年)には、「ひめ始」として掲載され、糄(ひめ:粥のようなもの)を食べる意で説明されている。その他にも、「飛馬始」として馬の乗り初めの日、「姫糊始」として女性が洗濯を始める日として「ひめ始」が用いられることがある。「ひめ始」の元は、暦の「火水始(ひめはじめ)」にあると考えられており、火や水を使い始める日である。正月2日の行事である。

【姫始の俳句】

姫始め闇美しといひにけり  矢島渚男

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季語|伊勢海老(いせえび)

新春の季語 伊勢海老

伊勢海老の俳句と季語伊勢海老は、十脚目イセエビ科に分類される海老で、房総半島以南の浅い岩礁に生息する。大きいものは40センチにも達する。海外ではロブスターの一種とみなされることがあるが、ロブスターはザリガニの一種である。
古くから伊勢の名物であったため「伊勢海老」の名が定着しているが、鎌倉蝦とか具足海老などと呼ばれることもある。また、他の種類にも用いられる「エビ」の名は、伊勢海老の特徴的な鬚を「柄鬚」とみたところからきているという説がある。

夏の産卵期は禁漁となり、冬場に旬を迎える。特に新年には、正月飾りにかかせないものとして、需要が高まる。古くから「威勢」に掛け、その甲冑をまとったような姿に「勝利」を見て、縁起物とされてきた。

【伊勢海老の俳句】

伊勢海老のどことは言はず菫いろ  角川照子

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季語|若水(わかみず)

新春の季語 若水

若井(わかい)

若水の俳句と季語古くは立春に天皇に奉じられた水のことをいったが、現在では元日の朝に初めて汲む水のことを指す。「若井」とは、若水を汲む井戸のこと。
若水には邪気を払う力があるとされ、神棚に供えた後に、飲んだり口を漱いだり食事に使用したりする。かつて多くの地方で、若水を汲むことは、年男の最初の仕事とされた。

万葉集にある「天橋も長くもがも高山も高くもがも 月夜見の持てる越水い取り来て 君に奉りてをち得てしかも」の「越水」は「変若水」とも書き「おちみず」と読む。これは、飲めば若返るといわれた霊薬で、ここにあるように月の神・ツクヨミが司ると言われた。このような信仰は世界中に存在しており、それが「若水」につながったと考えられる。
養老元年(717年)の詔に「醴泉は美泉なり。もって老を養うべし。蓋し水の精なればなり。天下に大赦して霊亀三年を改め養老元年と成すべし」とあり、養老の滝の水を若水として改元したと伝わる。
西行法師家集に、

とけそむるはつ若水の氷にて 春たつことのまつくまれぬる

の和歌がある。

【若水の俳句】

若水や冬は薬にむすびしを  志太野坡

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季語|小正月(こしょうがつ)

新春の季語 小正月

女正月(おんなしょうがつ)

小正月の俳句と季語(五節句之内睦月)元日の大正月に対して、一月十五日を小正月という。または、十四日から十六日、あるいは十五日から二十日までを小正月と言うこともある。
日本の古代の暦は、満月となる十五日が起点であったと考えられており、現在でも農業関係の儀式が多く残り、「望粥の節供」「赤小豆粥の節供」とも言う。「女正月」と言うのは、松の内に忙しかった女性が、ようやく解放されて正月気分を味わえるところからきている。

「土佐日記」や「枕草子」に記されるように、小正月の朝には小豆粥を食べる習慣がある。赤い小豆には邪気を払う力があるとされているため、小豆粥を食べて、一年の無病息災を祈るのである。
かつては、小正月に元服の儀を行っていたことから、2000年に1月第2月曜日に変更されるまでは、1月15日に成人式が行われていた。その他、小正月に行われる行事として、「左義長」や「どんど焼き」、「粥占」などがある。

【小正月の俳句】

松とりて世ごころ樂し小正月  高井几董
衰ふや一椀おもき小正月  石田波郷

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季語|初漁(はつりょう)

新春の季語 初漁

漁始(りょうはじめ)

初漁の俳句と季語その年、最初に魚が取れて、一年が始まる。初漁でとれた魚は初魚といい、恵比寿様をはじめとする漁業の神に供えて、1年の無事と豊漁を祈る。そのことを「初漁祝い」と言い、供物は直会として船主や関係者が食す。

「初漁」という言葉は、年が明けて初めて魚を獲ることであるが、獲れた魚そのものを指すこともある。魚の種類ごとに「初漁」はあるが、季語としては新春になるので、季語における「初漁」の対象は、マグロ、ブリ、ニシン、イカ、カレイ、アナゴ、ズワイガニ、ワカサギあたりか。

【初漁の俳句】

初漁や海境の青一文字  木内彰志
満ちてくる潮に向かへり漁始  伊藤通明

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季語|初湯(はつゆ)

新春の季語 初湯

初湯の俳句と季語新年になって初めて湯に入ること。正月二日に入る。産湯のこともまた初湯と言う。

「湯」の語源は「斎(ゆ)」にあると言われ、湯浴みとは、心身の穢れを濯ぎ「潔斎」の状態にすることである。
日本には、古くから湯浴みの習慣があったことが、記紀や風土記の記述から伺える。特に、「伊予国風土記」に見える伝説は、道後温泉の起源説として有名で、道後温泉が日本最古の温泉と言われる所以にもなっている。それによると、宿奈比古那(スクナヒコナ)を救うために、大穴持(オオナムチ・オオクニヌシ)が別府温泉から湯を引いてきて湯浴みさせたということになっており、古くから温泉の効用が認められていたということが分かる。

「湯水のごとく」という慣用句は、茶道具を清めるために大量の湯水を使う茶道から来た言葉だと言われるが、本来は「斎水」というのが正しいのではないだろうか。

【初湯の俳句】

初湯してうすぼんやりとおもふこと  高沢良一

【道後温泉 ふなや】

道後温泉に行くなら、ぜひ泊まりたいのがふなや。道後温泉で最も古い歴史を誇り、正岡子規はもとより、多くの文人に愛されてきた宿。特に夏目漱石には、「はじめての鮒屋泊りをしぐれけり」と詠むなど、馴染み深い宿。その句は、玄関前に句碑となっている。

季語|正月(しょうがつ)

新春の季語 正月

一月(いちがつ)

正月の俳句と季語本来は旧暦1月の別名。現在では、「三が日」または「松の内」という意味で使用することが多い。松の内は小正月の15日や20日までとすることもあるが、通常は7日まで。
室町時代の「塵添壒囊抄」に、秦の始皇帝が降誕した月を「政月」と言い、そこから「正月」になったとする説がある。

【正月の俳句】

正月や宵寝の町を風のこゑ  永井荷風

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季語|初昔(はつむかし)

新春の季語 初昔

初昔の俳句と季語新年になって去年を思うこと。同じ銘の「抹茶」がある。

【初昔の俳句】

高砂や去年を捨てつつ初昔  上島鬼貫



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季語|初手水(はつちょうず)

新春の季語 初手水

初手水の俳句と季語元旦の朝に、初めて酌んだ若水で心身を洗い清める。手水を「ちょうず」と読むのは「てみず」の転訛。手水は、禊の簡略作法であり、本来は河川に入り身を清める。イザナギノミコトが黄泉の国から帰還した折、日向の橘の小門の阿波岐原で身禊をしたという神話に基づく。

【初手水の俳句】

初手水むすぶや指も梅の花  志太野坡

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季語|元日(がんじつ)

新春の季語 元日

新年(しんねん)大旦(おおあした)元朝(がんちょう)・元旦(がんたん)

元日の俳句と季語一月一日。元旦は、その日の日の出。年神様が、新年の幸福をもたらすために訪れる。年神様を迎え入れるために、様々な正月行事が執り行われる。
年神は歳神とも書き、来方神とも穀物神とも祖霊とも言われる。該当する神は古事記にも現われ、建速須佐之男命と神大市比売の子・大年神とされる。大年神は、主流の神ではないが神裔が記されている特殊な神で、その神裔から、海外と関係する神と見られている。穀物に関与する神でもある。

【元日の俳句】

元日や晴れてすゞめのものがたり  服部嵐雪

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