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大野林火 

かりがねの声の月下を重ならず 
さみだるる一燈長き坂を守り 
走馬燈しづかに待てばめぐりけり 
ねむりても旅の花火の胸にひらく 
仏法僧こだまかへして杉聳てり 
夜光虫岩を蝕むごとく燃ゆ 
栗の花咲きいづるより古びけり 
灯籠にしばらくのこる匂ひかな 
七夕の子の前髪を切りそろふ 
末枯の陽よりも濃くてマッチの火 
仏めく母におどろく寒燈下 
紙漉のこの婆死ねば一人減る 
年いよよ水のごとくに迎ふかな 
納めたる注連も雪被て道祖神 
蔦紅葉巌の結界とざしけり 
人絶えて長き橋長き夜を懸る 
本買へば表紙が匂ふ雪の暮 
雪の水車ごつとんことりもう止むか 
蟇歩くさみしきときはさみしと言へ 
青草に猫夕濤を見てくれば 
梅雨見つめをればうしろに妻の立つ 
医通ひの片ふところ手半夏雨 
いや白きは南風つよき帆ならぬ 
寒暮鵜の耐へとぶ一羽も叫ばずに 
白き巨船きたれり春も遠からず  (海門)
春の虹消ゆまでを子と並び立つ 
ふと鳴いて白昼やさし野の蛙 
鳥雲に歳月おもひわれ歩む 
先師の萩盛りの頃やわが死ぬ日 
萩明り師のふところにゐるごとく 
物置けばすぐ影添ひて冴返る 
春燈を見上ぐるたびに光り増す 
積丸太日をため滑ら春の暮 
幹も黄に剛く竹秋はじまれり 
子猫われにまかせ親猫涼風裡 
大霜や遠望は火もみすぼらしく 
春塵の衢落第を告げに行く 
どしや降りに落花ただよふ仏生会 

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