季語|鯰(なまず)

仲夏の季語 

鯰ナマズ目ナマズ科の魚の総称で、主にナマズと呼ばれるマナマズを指す。マナマズは、東アジアの河川や湖沼の泥底に生息する肉食性の淡水魚で、口ヒゲと幅広い口が特徴。
鯰は夏の季語になっているが、5月から6月は繁殖期にあたり、群れをなして浅い水域で繁殖活動をすることに因む。
現代日本では泥臭さを嫌って食されることは稀であるが、中国料理ではよく用いられ、日本でも、平安時代以前の古代からよく食されていたと考えられている。また、郷土料理として提供される地方もあり、養殖技術も確立されている。
水田文化との縁も深く、日本では古くから親しまれてきた魚であり、特に、ナマズが暴れて地震が起こるという俗説は有名である。
「鯰」は国字で、中国ではナマズのことを「鮎」と書く。

【鯰の俳句】

泥川の月夜に泛きぬ大鯰  青木月斗

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季語|青梅(あおうめ)

仲夏の季語 青梅

梅の実(うめのみ)実梅(みうめ)

青梅俳句で「」とすれば花を指し、春の季語になるが、梅の実は夏の季語となる。ただし、俳諧歳時記栞草(1851年)には、「梅とばかりいひても、実のさまにいひとればよし」とあり、実であることが分かれば「梅」でも構わないとされる。
梅の実の収穫期は6月から7月にあたり、そのためにこの頃に降る雨は「梅雨」と書くようになった。
梅の実は、完熟すれば赤みを帯びて「黄梅」と呼ぶが、初期の状態では緑色をしており、これを「青梅」と呼び、梅酒にしたりなどする。熟すほどに梅干しにすることが多くなる。青梅には青酸配糖体アミグダリンが含まれており、呼吸困難を引き起こしたりなどするため、生食はできない。
梅の実は、食用以外にも「烏梅(うばい)」と呼ばれる整腸などに用いられる漢方薬に加工したりもする。

天満宮に祀られる菅原道真公は梅をこよなく愛したために、梅の種のことを「天神様」と呼ぶ。「梅は食うとも核食うな、中に天神寝てござる」との慣用句もあるが、これは梅の種に毒があることを知らせるものである。

【青梅の俳句】

青梅の臀うつくしくそろひけり  室生犀星

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季語|梅雨茸(つゆたけ・つゆだけ)

仲夏の季語 梅雨茸

梅雨茸「梅雨茸」という種類のキノコがあるということではなく、梅雨の時期に見られるキノコの総称である。キノコとは、カビと同じ糸状菌がつくる子実体や担子器果をいう。キノコは湿気を好むため、梅雨時には目にすることが多く、タマゴタケやテングタケなどが見られる。

▶ 関連季語 黴(夏)
▶ 関連季語 梅雨(夏)

【梅雨茸の俳句】

梅雨茸の育つ暗さに踏入りて  稲畑汀子

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季語|梅雨入(ついり・つゆいり)

仲夏の季語 梅雨入

入梅(にゅうばい)・栗花落(ついり・つゆり)

梅雨入「入梅」と言えば、かつては二十四節気の「芒種」の最初の壬の日とされ、6月11日頃であった。現在では暦に関係なく、梅雨に入ることを「入梅」「梅雨入」という。また、栗の花が落ちる頃に当たるため、「栗花落」とも書く。

【梅雨入の俳句】

大寺のうしろ明るき梅雨入かな  前田普羅

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季語|流し(ながし)

仲夏の季語 流し

流し「流し」とは、楽器を持って酒場などを回って歌を歌ったり、客のリクエストに応じて伴奏をしたりすることや、その芸人をいう。昭和初期から見られた営業形態であるが、カラオケの普及とともに減少傾向にある。
元は「新内流し」であり、これは、2人一組で三味線を弾き合わせながら街頭を歩く、新内節の修業の一つであった。江戸時代の末期から見られたものである。

【流しの俳句】

遠ざかる流しの三味にあはせ唄  安田蚊杖

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季語|沢瀉(おもだか)

仲夏の季語 沢瀉

面高(おもだか)・花慈姑(はなぐわい)

沢瀉オモダカ科オモダカ属オモダカは、中国原産で平安時代に渡来。現在では日本各地の水田や池などに見られる水生植物で、7月から10月頃に白い花を咲かせる。

語源は、中国語の湿地を意味する涵澤(おむだく)にあるなど、諸説ある。「慈茹(くわい)」の別名もあるが、葉を「鍬」に見立てて根を食していたことから、「鍬芋(くわいも)」と呼ばれ、それが転訛したもの。
枕草子の「草は」に、「おもだかも名のをかしきなり、心あがりしけむとおもふに」とある。
俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部六月に分類されている。苗を「おもだか」、根を「白くわゐ」と呼ぶとし、別名に「燕尾草」があるとしている。
葉が矢尻形をしているため「勝軍草(かちいくさぐさ)」の別名があり、その葉と花を図案化した「沢瀉紋」は十大家紋に数え上げられる。

【沢瀉の俳句】

やれ壺に沢瀉細く咲きにけり  上島鬼貫

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|菱の花

仲夏の季語 菱の花

菱(ひし)・水栗(みずぐり)

菱の花の季語と俳句ミソハギ科ヒシ属ヒシは、日本全国の池や沼などに自生する一年草の浮葉植物である。「浮草」のように見えるが、茎は池の底に着く。7月から9月頃に白い花を咲かせる。「菱の実」は秋の季語になる。
種子は蒸すと栗のような食味になるため、「水栗」の別名があり、日本では古くから食用として用いられてきた。万葉集には、柿本人麻呂の和歌で

君がため浮沼の池の菱摘むと 我が染めし袖濡れにけるかも

がある。ただし、ここに歌われているのは菱の実のことだと考えられている。
俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部五月に分類されているが、春之部正月に「菱の花をほこらす」が立項されており、左義長の火で餅を焼いて食べることだという。

すきまなく並ぶさまをいう「緊(ひし)と」が語源になったと考えられ、それが「ひし」に転訛したものと考えられる。

【菱の花の俳句】

ゆく水の跡や片寄る菱の花  天野桃隣

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季語|夾竹桃(きょうちくとう)

仲夏の季語 夾竹桃

夾竹桃キョウチクトウ科キョウチクトウ属セイヨウキョウチクトウの亜種であるキョウチクトウは常緑広葉樹で、熱帯地域では一年中花が咲くが、日本では6月から9月頃に開花し、夏の季語となる。寒さには弱いため、生育するのは関東以南である。花の色は桃色であるが、赤や黄色、白などの園芸品種もある。
インド原産で、江戸時代中期に中国経由で渡来した。原爆が投下された広島市では、焼土にいち早く咲いた花として復興のシンボルとなり、広島市の花に指定されている。

夾竹桃は乾燥や大気汚染に強いため街路樹としてよく植えられているが、強い毒を持ち、死亡例も報告されている。花にも毒が含まれている。
「きょうちくとう」の名は、漢名の「夾竹桃」を音読みにしたもの。葉は竹に、花は桃に似ていることから、竹と桃を併せたような植物という意味がある。

【夾竹桃の俳句】

二階より見えて夜明けの夾竹桃  菖蒲あや

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季語|茴香の花(ういきょうのはな)

仲夏の季語 茴香の花

フェンネル(ふぇんねる)

茴香の花 セリ科ウイキョウ属ウイキョウはヨーロッパ原産の多年草で、株全体からスパイシーな香りが漂う。
古くから栽培されているハーブのひとつで、古代エジプトや古代ローマでも栽培されていた記録がある。日本には平安時代に中国から渡来し、果実を生薬にした。種子は香辛料にもするが、葉を使うこともある。臭い消しのために魚料理に使うことが多く、「魚のハーブ」とも呼ばれる。

「茴香(ういきょう)」は中国から伝わった名をそのまま用いていると考えられ、和名は「呉の母/懐香(くれのおも)」。「回香」とも書き、回教徒(イスラム教徒)がもたらした植物の意とも、腐った魚の香気を回復する意とも言われる。英名はフェンネル。
6月から8月頃、黄色い小花をたくさんつける。

【茴香の花の俳句】

茴香の夕月青し百花園  川端茅舎

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季語|擬宝珠(ぎぼうし・ぎぼし・ぎぼうしゅ)

仲夏の季語 擬宝珠

擬宝珠の花(ぎぼうしのはな・ぎぼしのはな)

擬宝珠の俳句と季語キジカクシ科リュウゼツラン亜科ギボウシ属の総称で、日本ではオオバギボウシやコバギボウシなどが山地の湿り気の多い場所に自生する。6月から7月頃に紫や白の花をつけるが、その蕾が擬宝珠に似ることから「擬宝珠」の名がついた。
朝開いて夕方には萎れる一日花であるが、花茎に多数の花をつけて、下から順に咲いていくので、数日間花を楽しむことができる。

最も多くの種が存在するのは日本であり、シーボルトらによって日本からヨーロッパに渡った。それが園芸品種として改良され、再び日本に持ち込まれている。海外ではオーストラリアの植物学者の名に因んで「ホスタ」と呼ばれ、日本でも「ホスタ」と呼ばれることが多くなった。

俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部五月に分類され、「玉簪(ぎぼうし)」として立項されている。ここには、「花の象を以て名を命す」ともあるが、葉の形が橋の欄干の擬宝珠に似ているところから「ぎぼうし」と呼ぶとの説明もなされている。

【擬宝珠の俳句】

ぎぼし咲き海霧がむしばむ一墓標  金尾梅の門

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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