俳句

季語|御忌(ぎょき)

晩春の季語 御忌

法然忌(ほうねんき)・弁当始(べんとうはじめ)

御忌貴人の忌日の法会のことを「御忌」というが、俳句の世界では、特に浄土宗の開祖・法然上人の忌日に行なわれる法会のことをいい、春の季語となる。
法然上人の命日は陰暦1月25日であり、かつては陰暦1月19日から25日まで法会が行われていた。明治10年からは、4月19日から4月25日に行われている。知恩院ではこれを知恩講といい、京都の人々は弁当を持って参詣したため、弁当始といった。

法然上人の浄土宗には、「南無阿弥陀仏」と唱えることで平等に往生できるという、専修念仏の教えがある。法然上人は、建暦2年1月25日(1212年2月29日)、大谷禅房(知恩院)で亡くなった。享年80。

【御忌の俳句】

なには女や京を寒がる御忌詣で  与謝蕪村

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季語|虚子忌(きょしき)

晩春の季語 虚子忌

椿寿忌(ちんじゅき)・惜春忌(せきしゅんき)

高浜虚子4月8日は、「客観写生」「花鳥諷詠」を提唱した現代俳句の立役者高浜虚子の忌日。1959年(昭和34年)4月8日に、脳溢血のため鎌倉市由比ガ浜の自宅で亡くなった。85歳。戒名は虚子庵高吟椿寿居士。別号の惜春居から、この日を「惜春忌」ともいう。
最後の句は、亡くなる2日前に詠まれた「春の山屍を埋めて空しかり」。

▶ 高浜虚子

【虚子忌の俳句】

満開の花の中なる虚子忌かな  秋元不死男

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季語|峰入(みねいり)

晩春の季語 峰入

入峯(にゅうぶ)

峰入修験者(山伏)が大峰山(奈良県)に入って修行することを峰入という。天台宗本山派では、陰暦四月に熊野から吉野に抜けるコースの「順の峯」をとり、これを季語にしたもの。夏の季語にする歳時記もある。
真言宗当山派では、陰暦七月に吉野から熊野に抜ける「逆の峯」をとり、「逆の峰入」として秋の季語になる。現在では両派とも吉野から入る。

大峰山は山上ヶ岳・稲村ヶ岳・八経ヶ岳などからなる峰々で、狭義には山上ヶ岳を指す。修験道の聖地であり、飛鳥時代に役小角によって開山された。なお、最高峰は山上ヶ岳(1719m)ではなく、八経ヶ岳(1915m)である。

【峰入の俳句】

峰入りやおもへば深き芳野山  加舎白雄

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季語|苺の花(いちごのはな)

晩春の季語 苺の花

花苺(はないちご)

苺の花狭義には、バラ科オランダイチゴ属オランダイチゴの花を指す。現在では温室栽培が盛んで、苺の果実は冬場に見る事が多いが、5月頃から出回る露地物の苺は、3月から5月頃に花をつける。

▶ 関連季語 苺(夏)

【苺の花の俳句】

室咲に苺の花もあるあはれ  水原秋桜子

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季語|清明(せいめい)

晩春の季語 清明

清明節(せいめいせつ)

清明二十四節気の一つで、陰暦三月の節。太陽が黄道上の15度の位置を通過する時分で、春分から15日目(4月5日頃)にあたる。「清明節」ともいい、中国では先祖祭が行われた。沖縄でも重要な節日になっており、「清明祭」が行われる。
広義では、穀雨の前日までの15日間を「清明」という。「清浄明潔」を略した言葉であり、清らかで明るい様子を言ったものである。この頃は、風も清らかで、空気も澄んで見える。

【清明の俳句】

鳥ゐるや清明節のつちくれに  吉岡禅寺洞

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季語|草木瓜(くさぼけ)

晩春の季語 草木瓜

櫨子の花(しどみのはな)・地梨の花(じなしのはな)

草木瓜草木瓜は、バラ科ボケ属の植物で、関東以西の山地の斜面など、日当たりのよいところに自生する。同属の木瓜は、平安時代に中国から入ってきたと考えられており、日本の在来種がこの「草木瓜」である。
草木瓜は、木瓜よりも低木で、棘のある枝が横に広がり、草のように見える。木瓜よりやや遅れて、4月から5月頃に花が咲く。花は一重の朱色であるが、八重咲きや、黄色や白い花を咲かせるものもある。
別名に「櫨子(しどみ)」があるが、これは秋にできる果実からきた名前で、酸っぱいその実を「酸ど実」と呼んだものが転訛したと考えられている。
庭に植えると火事を招くとの俗説があり、庭木としては好まれない。

【草木瓜の俳句】

草木瓜や放牛の歩み十歩ほど  大野林火

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季語|松露(しょうろ)

晩春の季語 松露

松露松露は、ショウロ科ショウロ属のキノコの一種で、形は球体でトリュフに似る。本州から九州の海辺の松林に春や秋に見られるが、希少価値が高い。食味は美味で香りもよい。
現代では春の季語に分類することが多いが、俳諧歳時記栞草(1851年)では、秋之部八月に分類される。松の津液が凝結してできたものだと考えられ、そのため「松露」の名がついた。

トリュフにはセイヨウショウロの和名があるが、ショウロは担子菌門であるのに対して、こちらは子嚢菌門で、同じキノコではあるが、分類学上は全くの別物である。また、ニセショウロというよく似たキノコもあるが、これは毒キノコになる。ショウロの内部が白色であるのに対し、こちらは内部が黒い。

【松露の俳句】

砂丘つみ重ねて僅か松露あり  百合山羽公

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季語|岩燕(いわつばめ)

晩春の季語 岩燕

岩燕ツバメ科ツバメ属イワツバメは、ツバメより小ぶりで、ツバメに比べて尾羽の切込みが浅い。腰が白い羽毛で覆われるのもイワツバメの特徴である。九州以北に夏鳥として飛来し、温暖な地方では越冬することもある。
3月中旬から4月頃に飛来し、海岸や山地の岩場に、泥と枯れ草を使って壷形の巣をつくる。最近では、コンクリートの建造物に、集団で営巣する様子も観察される。8月頃まで繁殖活動を行い、そのほとんどのものは秋に南へと去っていく。

因みに広東料理の高級食材となる「燕の巣」は、本種のものではなくアマツバメ科の鳥の巣で、ツバメやイワツバメとは全く違う種類の鳥である。

【岩燕の俳句】

岩燕風を嫌ひて濤を好く  原裕

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季語|蚕(かいこ・こ)

晩春の季語 

蚕飼(こがい)蚕屋(こや)蚕棚(かいこだな・こだな)捨蚕(すてご)・桑子(くわこ・くわご)

蚕「蚕」とは、鱗翅目カイコガ科カイコガ属カイコガのことで、特にその幼虫を指す。幼虫は桑の葉を食べて蛹になるが、その繭は絹になる。
蚕を飼育して繭を生産することを「養蚕」というが、5000年以上前に中国で始まったと考えられている。中国の伝説では、黄帝の后である西陵氏が始めたとされている。カイコガは、家畜化されて家蚕(かさん)と呼ばれ、一頭二頭と数える。養蚕に特化した昆虫であり、今では野生回帰能力を完全に失ってしまった。
日本でも古い時代から養蚕が行われているが、蚕の染色体の解析から中国から伝来したとの考え方が定着している。古事記にはスサノオがオオケツヒメを征した時、頭から蚕が生じたとしている。魏志倭人伝にも養蚕が行われていたことが記されており、発掘遺物の状況から、弥生時代に養蚕が始まったと考えられている。
万葉集には「蚕」として3首の歌が載るが、いずれも「母が飼ふ蚕」として登場する。柿本人麻呂は、

たらちねの母が養ふ蚕の繭隠り 隠れる妹を見むよしもがも

と歌っている。カイコガ

養蚕は、桑の葉がある4月から9月頃に行われる。孵化した幼虫は4回脱皮し、五齢幼虫となって一週間ほどすると糸を吐き、繭をつくって蛹になる。卵から蛹になるまで約25日。養蚕では、この繭をとって絹にするが、そのまま置いておくと12日で成虫になる。飼育時期に応じて「春蚕(はるこ)」「夏蚕(なつこ)「初秋蚕」「晩秋蚕」と呼ぶが、「蚕」は俳諧の時代にはすでに春のものとなっている。
現在では養蚕業は下火となり、ピーク時には200万戸以上あった養蚕農家も数百戸にまで減少した。第二次世界大戦前の日本では、絹は重要な輸出品であり、蚕は「おかいこ様」とも呼ばれており、その頃の記憶は世界遺産・富岡製糸場に残されている。
蚕を飼うことを「蚕飼」というが、かつては北西に祭壇を設けて蚕神を祀り、清浄を保って行う作業であった。その場所は「蚕屋」と呼んで注連縄を引き、蚕を飼う蚕籠(こかご)をのせる蚕棚を置いた。病気の蚕は「捨蚕」と呼んで捨てた。

「かいこ」の語源は「殻(かいご)」であるとの説がある。日本書紀には、雄略天皇六年に家臣に蚕を集めるように指示したが、間違えて児を集めたとの記述があり、古くは「こ」と呼ばれていたと考えられている。そこから「蚕(こ)」に「飼」がついて「かいこ」と呼ぶようになったとの説もある。

【蚕の俳句】

蚕飼する人は古代のすがた哉  河合曾良

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季語|東菊(あずまぎく)

晩春の季語 東菊

東菊キク科ムカシヨモギ属アズマギクは、本州の中部以北の草原に見られるために、東日本の菊という意で「東菊」と呼ばれる。群生し、4月から7月くらいに花をつける。キク科シオン属の園芸品種である都忘れのことを「東菊」と呼ぶこともある。

【東菊の俳句】

湯がへりを東菊買うて行く妓かな  長谷川かな女

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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