カテゴリー: 季語
季語|炉(ろ)
三冬の季語 炉
加熱したり溶融したりする目的でつくられた装置を「炉」と呼び、工業用のものなど大掛かりなものもあるが、俳句では茶道で用いる炉が主に詠まれてきた。また、ひと昔前までは、冬の生活には欠かせなかった囲炉裏も冬の季語として定着している。これは「暖炉」とも呼べるものであるが、暖をとる以外にも煮炊きにも用いるために、区別する傾向がある。
「囲炉裏」は、上方の横木から自在鉤を吊るし、そこにやかん等を掛ける。燃料には炭や薪を用い、火箸で火力調整を行う。
似たようなものに「火鉢」があるが、囲炉裏などは屋内に恒久的に設けられるのに対し、火鉢は移動することができる。
俳諧歳時記栞草(1803年)には「爐」があり、「炭櫃(すみびつ)の略。茶湯にこれを用ふ。只爐と称」とある。
【囲炉裏の俳句】
五つ六つ茶の子にならぶ囲炉裏哉 松尾芭蕉
季語|南瓜(かぼちゃ・なんきん・なんか)
仲秋の季語 南瓜
ウリ科カボチャ属の蔓性の一年草で、栽培品種は大きく分けてニホンカボチャ・セイヨウカボチャ・ペポカボチャの3系統がある。
原産はアメリカ大陸で、ニホンカボチャは、大航海時代に広まり東南アジアで栽培されていたものが、戦国時代にポルトガル船によって九州に伝播したものである。カンボジアから持ち込まれ、豊後国の大友宗麟に献上されたとされる。
ニホンカボチャは、溝が入った形状から「菊南瓜」とも呼ばれる。有名な品種に、瓢箪型をした京都特産の鹿ケ谷南瓜がある。春に播種し、秋に収穫する。
ちなみにセイヨウカボチャは、幕末の1863年にアメリカから伝わり、冷涼な北海道などに広まった。
「かぼちゃ」の語源は、伝来した「カンボジア」にあり、「南瓜」には、南蛮渡来の瓜の意がある。「なんきん」は、伝来において寄港地となった「南京」に由来する。
「唐茄子」と呼ばれることもあるが、「羇旅漫録」(曲亭馬琴1803年)には「とうなすといふもの箱根より西になし」とあり、かつては関東で栽培されていた一品種だったと考えられている。
冬の季語に「冬至南瓜」があるが、明治時代ころからの風習で、風邪をひかないように冬至に栄養価豊富な南瓜を食べるというものである。
ハロウィンには南瓜が活躍するが、本来は、魔よけの力を持つとされる蕪が用いられていたとされる。しかし、アメリカに伝来すると、入手しやすい南瓜が用いられるようになったという。
慣用句の「南瓜に目鼻」は、丸顔で太った背の低い人を指す。同じような不器量を表す言葉に、「南瓜頭」がある。
【南瓜の俳句】
鶺鴒がたたいて見たる南瓜かな 小林一茶
季語|草の実(くさのみ)
三秋の季語 草の実
木にならない植物を「草」とか「草本」などと呼ぶが、日本に見られるものだけで6000種近くになる。俳句の世界では「草」と言えば山野草、人里植物、耕地雑草を指すが、これらを合わせると5000種になる。よって、実を結ぶ季節は秋に限られたものではないが、秋に実る植物は多い。「俳諧歳時記栞草」(1851年)にも、「諸草のたぐひ、春夏に花を開く者あれど、秋多き故、無名の草花を秋とす。実もまた然り」とある。
▶ 関連季語 秋草(秋)
季語|小鳥(ことり)
仲秋の季語 小鳥
渡って来る鳥も含めて、秋に見られる小型の鳥。「小鳥」の定義は難しいが、概ね手の平サイズの鳥で、水鳥は含まないことが多い。秋に渡ってくる小鳥としては、アトリ、ジョウビタキ、ヒワなどがある。
「小鳥」が秋の季語となったのは、「渡り鳥」の派生季語である「小鳥来る」に由来し、本来は「渡ってくる色々な小鳥」の意で「色鳥」と呼ぶ。かつては、山頂などに網を張ってこれらを捕獲したが、その時に使用する網を「小鳥網」と呼び、秋の風物詩であった。
また、秋に相撲人を召すことを「ことり使」と呼んだが、「小鳥」が秋の季語に昇格したのは、この古来の行事の影響もあったかもしれない。ただ、「小鳥」が秋の季語として定着したのは近年のことである。
季語|すだち
晩秋の季語 すだち
漢字では「酢橘」と書き、代表的な「酢みかん」として、酢の代りに使用される「香酸柑橘類」に分類される。
原木は、徳島県鳴門市にあったとされ、現在でも徳島名産で、ほぼ100%を徳島県内で生産している。文献上は「大和本草」(1706年)に「リマン」として初出するが、太古からあったとの説もある。
徳島県では、「すだちくん」というイメージキャラクターを使って、全国にアピールしている。
実がなるのは8月から10月頃で、青いうちに出荷する。1980年代に全国に広く知られるようになり、現在ではハウス栽培もあり、年中入手することができる。
【すだちの俳句】
すだちしぼる手許や阿波の女なる 京極杞陽
季語|柘榴(ざくろ)
仲秋の季語 柘榴
ミソハギ科ザクロ属の落葉小高木にザクロがあり、その実は秋の季語となる。初夏に花をつけ、花柘榴の季語もある。実がなるのは9月から11月頃。
厚く硬い果皮を持つ拳状の果実は、熟すと不規則に裂ける。その裂け目から、多汁性の赤い歯のような形の、種子を含んだ粒が現れる。粒は生食したりジュースにしたりする。また近年では、更年期障害や乳癌に対する効果が期待されるとして、女性に人気となった。
日本には平安時代に中国から渡来し、中国語名の「石榴」の字が当てられ、中国風に「ザクロ」と呼ばれるようになった。原産地と考えられているペルシアのザグロス山脈に語源があるとの説がある。
むかし、子供を食う鬼神がいたが、釈迦は人肉を食べないように約束させて、柘榴の実を与えた。以来、その鬼神は鬼子母神として子育ての神になったとされ、柘榴は人肉の味がすると言われるようになった。
世界的には、豊穣や子宝に恵まれる吉木とされる。
【柘榴の俳句】
深裂けの柘榴一粒だにこぼれず 橋本多佳子
季語|太刀魚(たちうお)
季語|鱈場蟹(たらばがに)
季語|鱸(すずき)
三秋の季語 鱸
スズキ目スズキ科スズキ属スズキは、沖縄を除く日本沿岸の河口部を中心に生息している。春から秋にかけて、より淡水域に近いところまで入り込んきて、河川の奥深くの純淡水域まで達することもある。
産卵期は冬であり、夏場によく肥える高級魚である。旬は夏であるが、秋には産卵に備えて岸に寄ってくるので、「鱸釣」は秋の風物詩となり、「鱸」は秋の季語に分類されることになった。釣り人は鱸のことを、英名に因んで「シーバス」とも呼ぶ。
出世魚としても知られており、約10年の寿命を持ち、「コッパ」⇒「セイゴ」⇒「フッコ」⇒「スズキ」と名が変わり、スズキは30センチ以上のもの。その、すすいだように白い身から「すすぎ」が「すずき」になったという説など、語源には諸説ある。
万葉集には鱸釣の和歌で2首が載り、柿本人麻呂に
荒栲の藤江の浦に鱸釣る 海人とか見らむ旅行く我れを
がある。俳諧歳時記栞草には八月に「鱸釣(すずきつる)」があり、「大和本草」の引用で下記のようにある。
鱸魚、大なる者二三尺、三月以後七月まで肥ゆ。暑月、脂多くして味よし。八月よりやする。夏秋、さしみ鱠とし鮓となす。夏月、腸の味よし。クモワタといふ腸あり、脂多く味よし。小なるをセイゴといふ。松江(せうこう)なるべし。中華松江の鱸は、其大さ、日本のセイゴの如しと云。河鱸、味尤よし、暑月の佳品也。海と河の間にあるもの味よし。漁人、これを釣、或は戈にて突てとる。
【鱸の俳句】
打つ櫂に鱸はねたり淵の色 宝井其角