上島鬼貫 ●
行水の捨てどころなし虫の声 季●春草の姿持たる裾野かな 季そよりともせいで秋たつことかいの 季鵯や世の囀りも石の花 季によつぽりと秋の空なる不尽の山 季 (大悟物狂)●水無月や風に吹かれに故郷へ 季から井戸へ飛びそこなひし蛙よな 季風もなき秋の彼岸の綿帽子 季井のもとの草葉に重き氷柱哉 季高砂や去年を捨てつつ初昔 季うき島や露に香うつる馬の腹 季土に埋て子の咲花もある事か 季こいこいといえど蛍がとんでゆく 季夢返せ烏の覚ます霧の月 季歩く物と知れば尊し神おくり 季軒裏に去年の蚊動く桃の花 季人に逃げ人に馴るゝや雀の子 季又ひとつ花につれゆく命かな 季咲からに見るからに花のちるからに 季闇の夜も又おもしろや水の星 季七草や露の盛りを星の花 季叶えばぞ陽につぼめる霜の花 季吹ばふけ櫛を買たに秋の風 季馬はゆけど今朝の不二見る秋路哉 季風の間に鱸の膾させにけり 季ひうひうと風は空ゆく冬ぼたん 季やれ壺に沢瀉細く咲きにけり 季冬枯や平等院の庭の面 季
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