俳句

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種田山頭火 

ふるさとの土の底から鉦たたき 
なかなか死ねない彼岸花さく 
分け入つても分け入つても青い山  (草木塔)
ぬくうてあるけば椿ぽたぽた 
身にちかくあまりにちかくつくつくぼうし 
この旅、果もない旅のつくつくぼうし 
ほつと月がある東京に来てゐる 
もりもり盛りあがる雲へあゆむ 
ぶすりと音たたて虫は焼け死んだ 
焼かれて死ぬる虫のにほひのかんばしく 
打つよりをはる虫のいのちのもろい風 
いつ死ぬる木の実は播いておく 
おもひでがそれからそれへ酒のこぼれて 
おちついて死ねそうな草萌ゆる 
しぐるるや人のなさけに涙ぐむ 
一つ家に一人寝て観る草に月 
ひとりきいてゐてきつつき 
冬ぐもりひさびさ湯にいり金を借る 
鉄鉢の中にも霰 
どうしようもないわたしが歩いている 
いさかへる夫婦に夜蜘蛛さがりけり 
うしろ姿のしぐれてゆくか 
酔ざめの風のかなしく吹きぬける 
おもひでは波音がたかくまたひくく 
ぬくめしに雲丹をぬり向きあつてゐる 
今日のをはりのうつくしや落日 
鰯さいても誕生日 
うまれた家はあとかたもないほうたる 
ついてくる犬よおまへも宿なしか 
生き残る蠅がわたしをおぼえてゐる 
あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ 
朝凪の島を二つおく 

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