季語|毛虫(けむし)

三夏の季語 毛虫

毛虫焼く(けむしやく)

毛虫の幼虫の内、毛や棘に覆われているものを「毛虫」という。蝶となるものではアカタテハやヒョウモンチョウ、蛾となるものではドクガやヒトリガなどの幼虫が毛虫と呼ばれる。
毛虫の中には毒を持ったものも存在し、毒針毛に触れるとかゆみを生じたりなどする。これら危険な毛虫には、ドクガ、ヒトリガ、カレハガ、イラガなどがある。

毛虫が見られるのは春から秋にかけてであるが、特に蛾の活動が活発になる5月頃からよく見られるようになる。人体に影響を与え植物を食する毛虫は、昔から積極的に駆除されてきたが、古くは棒の先に油をしみこませた布を巻き付け、それに火をつけてあぶり殺したりした。これを「毛虫焼く」という。

【毛虫の俳句】

毛虫焼く火のめらめらと美しき  木下夕爾

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季語|簟(たかむしろ)

三夏の季語 

竹席(ちくせき)・竹筵(たけむしろ)

簟細く割った竹を編んだ敷物のこと。ひんやりとした触感があるため、夏場の寝床に使ったりなどする。俳諧歳時記栞草(1851年)に「簟は竹席也。竹を以て席(むしろ)とす」とある。

【簟の俳句】

簟五尺四方の世界哉  正岡子規

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季語|鯒(こち)

三夏の季語 

鯒カサゴ目コチ亜目のマゴチ・メゴチ・ワニゴチ・ウバゴチや、スズキ目ネズッポ亜目のネズミゴチ・ヨメゴチなど、平たい体で腹ばいになって生活する海水魚を総称して「鯒」と呼ぶ。代表的なものは「マゴチ(真鯒)」であり、1メートル近くにまで成長するものもある。
マゴチは、東北以南の水深30mまでの海底で、砂泥に擬態して小魚などを捕食して生活する。産卵期である夏には、海岸近くに寄ってくる。暑い盛りが旬で、高級魚として刺身や天ぷらなどにして食される。

公家が正装した時に持つ「笏(しゃく:こつ)」に形が似ていることから、「こつ」と呼ばれたものが転訛した。

【鯒の俳句】

鯒釣るや濤声四方に日は滾る  飯田蛇笏

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季語|箱釣(はこづり)

三夏の季語 箱釣

金魚すくい(きんぎょすくい)

箱釣夏祭りの露店などで見られる金魚すくいのこと。水槽に入れられた金魚を、紙をはったポイと呼ばれる杓子ですくいとり、椀に受ける。
金魚は室町時代に入ってきたと考えられており、金魚すくいが始まったのは江戸時代後期からだと言われている。
金魚養殖が盛んな奈良県大和郡山市では、「全国金魚すくい選手権大会」も開かれている。8月第3日曜日は「金魚すくいの日」である。

【箱釣の俳句】

箱釣や棚の上なる招き猫  富安風生

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季語|亀の子(かめのこ)

三夏の季語 亀の子

銭亀(ぜにがめ)

亀の子小さい亀や、子供の亀のことを「亀の子」と言う。中でも「銭亀」は、クサガメやニホンイシガメの幼体のことで、甲羅が江戸時代の硬貨に似ているところから名がついた。
クサガメやニホンイシガメは夏場に産卵し、秋に孵化する。そのため、夏の季語として「亀の子」と呼ばれるものは、概ね前年に孵化した体長10センチに満たない幼体を指すことになる。

外来種であるミドリガメの子は、夜店の屋台でよく売られていた。しかし、動物虐待の観点や、大きくなって湖沼などに放たれたものが、生態系に悪影響を及ぼすことから、現在ではほとんど見かけなくなった。

季語ではないが、幼児を背負う時に羽織る綿入れや、亀の甲羅のことも「亀の子」と呼ぶ。また、形状が似ているところから名がついた「亀の子たわし」もある。

【亀の子の俳句】

銭亀のいづれ分たず転倒す  上田五千石

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季語|夏痩(なつやせ)

三夏の季語 夏痩

夏負け(なつまけ)夏負(なつまけ)

夏痩夏の暑さは、体力を奪う。その結果、食欲がなくなって痩せることを「夏痩」という。
直接的な原因には、脱水や、冷たいものを食すことによる消化不良などが挙げられている。反対に、暑さのために空調の効いた部屋で動かなかったり、冷たいものを食べすぎたりするために「夏太り」する者も多いと言われている。

万葉集には、大友家持の和歌で、「痩せたる人を咲へる歌」として

石麻呂に我もの申す夏痩せに よしというものぞ鰻とり食せ

があり、古くから夏バテ対策にが食されていたことが窺える。

【夏痩の俳句】

夏痩や雷嫌ひの乱れ髪  小林一茶

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季語|夜鷹(よたか)

三夏の季語 夜鷹

蚊吸鳥(かすいどり)

夜鷹ヨタカ目ヨタカ科ヨタカ属の鳥。日本には、インドネシアなどで越冬していたものが夏鳥として飛来し、繁殖活動を行う。
夜行性で、昼間は木に擬態して休む。大きな口を開けて飛翔し、主に昆虫を食す。
夜に活動し、鷹のような羽毛を持つところから、「夜鷹」と名付けられたと考えられる。宮沢賢治の童話に「よだかの星」があるが、醜い鳥として描かれている。

江戸時代に、辻に立って商売をした最下層の遊女も、「夜鷹」と呼ばれた。これは、夜行性のヨタカに掛けてつけられた呼び名である。また、夜間に屋台で商売をした蕎麦屋は、「夜鷹蕎麦」と呼ばれた。夜鷹蕎麦は冬の季語になっている。

【夜鷹の俳句】

夜鷹鳴き月またくらしやぶれがさ  水原秋桜子

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季語|ハンカチ

三夏の季語 ハンカチ

ハンケチ汗拭(あせぬぐい)

ハンカチ英語の「handkerchief」のことで、日本ではハンカチーフ、それを略してハンカチ、ハンケチという。
紀元前3000年頃の古代エジプトには、既にハンカチは存在していたと考えられている。ハンカチが正方形になったのは、マリー・アントワネットの提言によると言われている。

刺繍が施された四角いハンカチが日本で普及したのは、明治時代に入ってからである。それまでは、汗拭という小さな手拭が、ハンカチの役目を担っていた。
ハンカチはファッション的要素も大きい生活グッズであるが、俳句の世界では、汗を拭くための道具と見なし、夏の季語になる。

近年では、ハンカチを取り上げた芸術作品も多く、映画「幸福の黄色いハンカチ」や1976年のヒット曲「木綿のハンカチーフ」は特によく知られている。

【ハンカチの俳句】

たはむれにハンカチ振つて別れけり  星野立子

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季語|鳧(けり)

三夏の季語 

水札(けり)

鳧チドリ目チドリ科タゲリ属ケリ。日本で春夏に繁殖する。中部以西には留鳥として生息するものが多いが、東北や関東のものは夏鳥として東南アジアなどから渡ってくるものが多い。水田や湿地などで、昆虫や魚、動物などを捕食して生活する。警戒心が強く、カラスなどの外敵が近付くと、鳴きながら威嚇する。この時の鳴き声が「ケリッ」と聞こえることから、「ケリ」の名がついた。
俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部五月に「鳧羹(けりのあつもの)・鳧炙(けりのあぶりもの)」があるが、今日の歳時記にある「梟の羹(ふくろうのあつもの)」である。古代中国では端午の節句に、これを悪鳥として、羹や炙にして百官に下して食べたという。

同属にタゲリという冠羽を持った「田鳧」があるが、こちらは冬鳥として飛来し、冬の季語になる。
「けりをつける」の「けり」は、助動詞から来ているが、「鳧を付ける」と書くこともある。

【鳧の俳句】

水札の子の浅田に渡る夕かな  久村暁台

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季語|萬緑(ばんりょく)

三夏の季語 萬緑

萬緑一面のみどりを指す言葉で、1939年(昭和14年)に詠まれた中村草田男の代表的な俳句「萬緑の中や吾子の歯生え初むる」から生まれた夏の季語。元になっているのは、北宋の王安石の詠柘榴詩にある「万緑叢中紅一点」である。現在では、多くの男性の中に一人だけ女性がいることをいい、一つだけ目立つものがまじっていることをいう慣用句になっている。
草田男は、1946年10月に創刊した俳誌にも「萬緑」の名をつけた(2017年廃刊)。

【萬緑の俳句】

萬緑の中や吾子の歯生え初むる  中村草田男

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