季語|鷽替(うそかえ)

新春の季語 鷽替

鷽替太宰府天満宮で、古くから正月七日に行われてきた神事。酉の刻になると「替えましょ、替えましょ」の掛け声とともに、「木うそ」を互いに交換する。これには、嘘を誠心に替え、悪いことを嘘にして吉に取り替えるという意味がある。
現在では、亀戸天神社など、菅原道真を御祭神とする多くの天満宮で行われているが、神社によって日程に違いがある。参拝者は、古い木うそを神社に納めて、新しい木うそにとりかえる。菅原道真が蜂に襲われた時に、の大群が助けたという伝承に基づく神事だとも言われている。

【鷽替の俳句】

鷽ひとつ替ふることなく書架にあり  石田波郷

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季語|恵方(えほう)

新春の季語 恵方

恵方詣(えほうまいり)

恵方陰陽道で歳徳神がいる方角を恵方とし、正月にはその方角から歳神が訪れるとする。十干に従い、年によって方角は変わる。年初にその方角の寺社に参拝することを恵方詣と言い、平安時代から続く習慣であった。現代ではそれが、方角に関係がない「初詣」にとってかわった感がある。
1998年頃から盛んになった風習に、節分に恵方を向いて「恵方巻」を食べるというものがあるが、今のところ「恵方巻」は季語とはなっていない。本来「恵方詣」は旧暦に則った習慣であり、節分のあとに行われていた。新春の季語としている現在の感覚から言えば、約1カ月のずれがある。

【恵方の俳句】

箒目に鳥の足あと恵方道  小島健

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季語|御降り(おさがり)

新春の季語 御降り

御降り雨が降ることを「御降り」と言うが、俳句の世界では正月三が日に降る雨や雪のことを「御降り」として、新春の季語とする。これを、天から神霊が降り下ると見たり、神霊に捧げた供物をもらい受けると見る。

【御降りの俳句】

まんべんに御降受ける小家かな  小林一茶

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季語|仏の座(ほとけのざ)

新春の季語 仏の座

田平子(たびらこ)

仏の座春の七草の一つに数え上げられる「仏の座」は、キク科ヤブタビラコ属コオニタビラコであり、分類学上「ホトケノザ」の名称を持つシソ科オドリコソウ属の植物とは別物になる。田圃などの湿気の多いところを好み、3月から5月頃に黄色い花をつけるが、新春の季語となるのは、菜葉を正月七日の七草粥に用いるからである。

仏の座シソ科オドリコソウ属ホトケノザは、3月から6月頃に紫色の花をつける。「三階草」「宝蓋草」として春の季語となり、「仏の座」として春の俳句に詠まれることもある。

【仏の座の俳句】

葉は花の台へ登れ仏の座  安原貞室

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季語|薺(なずな)

新春の季語 

薺粥(なずながゆ)薺打ち(なずなうち)薺売(なずなうり)

薺アブラナ科ナズナ属ナズナは越年生の草本で、3月から7月頃に花をつけ、「花薺」として春の季語になるが、「薺」だけでは新春の季語である。これは、正月七日の七草粥に用いられるためで、この粥を「薺粥」とも呼ぶ。また、薺粥を作るために正月六日の晩に七草を俎板の上でたたくが、これを「薺打ち」「薺打つ」とも言う。かつては、七種粥に用いる薺を売り歩く人がいて、「薺売」と呼んだ。

【薺の俳句】

俎板に薺のあとの匂ひかな  内藤鳴雪

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季語|七種(ななくさ)

新春の季語 七種

七草(ななくさ)春七草(はるのななくさ・はるななくさ)七草粥(ななくさがゆ)

七草七草粥を食べて祝う正月七日の節句を「人日の節句」といい、「七種」とも呼ぶ。邪気を払い万病を除く目的で食す「七草粥」には、七種の野菜が入る。七種の野菜は、時代や地方によって異なることもあるが、「芹(せり)」「薺(なずな)」「御形(ごぎょう)」「繁縷(はこべら)」「仏の座(ほとけのざ)」「菘(すずな)」「蘿蔔(すずしろ)」であり、「年中故事要言」に

芹齊五形はこべら仏の座 菘すずしろこれぞ七種

と歌われる。
七種の行事は、年初に行われた「若菜摘み」という古代の風習につながるものであり、中国から伝わった「人日」により、平安時代ころから「七種菜羹」という7種の野菜の羹(あつもの)を食べる習慣が定着したと言われる。
七草は、六日の晩に「七草なずな唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に七草なずな」と歌いながら俎板の上でたたき、七日の朝に粥に入れる。この囃し歌は、鳥追い歌に由来していると言われ、豊作を祈る行事とのつながりも指摘されている。

本来「七草」は秋の七つの草を指すものであるが、現在ではこれを「秋の七草」として区別し、春のものはそのまま「七種」「七草」と呼ぶのが普通である。

【七種の俳句】

あをあをと春七草の売れのこり  高野素十

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季語|初泣(はつなき)

新春の季語 初泣

泣初(なきぞめ)

初泣正月にはじめて泣くこと。「初泣」「泣初」ともに、子供に対して使われることが普通である。大人に対して使うにしても、「泣初」は、普段よく泣くものに対して使うか、あるいは感動が多い年ということが明らかな場合に用いるべきである。新春の季語となることから、通常は悲しい涙の意で用いられることはない。

【初泣の俳句】

泣初の両手握つてやりにけり  山西雅子

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季語|福寿草(ふくじゅそう)

新春の季語 福寿草

元日草(がんじつそう)

福寿草キンポウゲ科フクジュソウ属フクジュソウは、北海道から九州に自生する多年草で、毒草である。花の中の温度を下げないために花弁を開閉するため、日が出ると開き、隠れると萎む。
2月から4月頃に開花し、旧暦では元日に咲いたことから元日草と呼ばれた。現在でも正月用に花屋で売られているが、これはハウス栽培されたもの。
「難を転じて福となす」と掛けて、南天の実と組み合わせて縁起物とする。

早春にめでたい黄金色の花を咲かせることから、元は「福告ぐ草」と呼ばれていたが、江戸時代の初めに、新年を祝う草として「福寿草」に変わっていったという。江戸時代には、器に植えて贈り合った。
万葉集に柿本人麻呂の和歌で

春さればまづ三枝の幸くあらば 後にも逢はむな恋ひそ我妹

があるが、この「三枝(さきくさ)」は福寿草の可能性があると言われている。

【福寿草の俳句】

花よりも名に近づくや福寿草  加賀千代女

▶ 新春の季語になった花 見頃と名所
▶ 俳句の季節「念ずれば福寿草の花開く」

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季語|正月の凧(しょうがつのたこ)

新春の季語 正月の凧

武者絵凧(むしゃえだこ)武者凧(むしゃだこ)遠凧(とおだこ)

正月の凧の俳句と季語「凧」では三春の季語であるが、「正月の凧」で新春の季語となる。本来は測量や通信などの軍事目的で使用されたものであり、中国では紀元前4世紀には用いられていた。
日本では平安時代までには伝来し、次第に凧合戦が行われるようになってきた。凧合戦は全国いたる所で開催されていたが、時期は一定ではなく、主に新春から初夏にかけて開催されていた。江戸時代の俳諧歳時記栞草には、既に「春之部」に立項されている。

新春の凧は、俳句の世界では「正月の凧」として詠み込むことが多く、その他「初凧」「飾り凧」なども用いられる。
また「いかのぼり」は新春にも春にも挙げられる季語で、烏賊の形に似ていることから、本来の「凧」の呼び名であったと考えられている。江戸時代初めにいかのぼり禁止令が出たため、禁止を回避するために「たこ」と呼ばれるようになったと言われている。

正月の風物詩として凧が定着したのは、男子の健康成長を願うために用いられたからである。また、俳諧歳時記栞草には、小児の熱を冷ますために凧を揚げて空を見上げさせたともあり、新年に健康を祈る遊びとして定着していった。

【正月の凧の俳句】

かの童まだ遠凧につながれる  林翔

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季語|去年今年(こぞことし)

新春の季語 去年今年

去年今年の俳句と季語「行く年来る年」のようなニュアンスで用いられる。文字通り「去年と今年」という意味。
俳諧歳時記栞草(1851年)では、正月項に「去年、今年」があり、雑談抄の引用で「貞徳の説に、去年・今年、春也。今年とばかりは句によるべし。師説に、連歌には去年と云詞は春也。今年は雑」とある。つまり、「去年」単体でも新春の季語となる。その場合は、過ぎ去った年を回想するものとなる。

【去年今年の俳句】

去年今年貫く棒の如きもの  高浜虚子

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